さて、翌20日(火)CMU訪問2日目は、レファレンス・サービス部門、図書館システム部門、収書部門、技術部門の各担当者との会見の他、
合間に学内施設見学と図書館内にあるClarke Historical Libraryを案内していただきました。
まず、レファレンス・サービス関係については、Head of Reference ServicesのMichael Lorenzenさんと会見しました。
開館時間は平日夜の12時までですが、レファレンス・サービスも夜の10時まで受付しているとのことで、
夕方5時で受付終了となる本学の図書館とのサービスの違いを感じないではいられませんでした。
また、Reference Librarianは、図書館利用法や情報リテラシーに関する授業を行っており、
昨年度は807クラス(授業)の19,000人の学生に授業したそうです。
レファレンスについては、アメリカでは小学校から、図書館には司書がいて、
わからない時や調べたいときに相談に乗ってくれると教育されているから、学生もよくレファレンス・サービスを利用していると聞きましたが、
日本との図書館の認識の違いを改めて感じました。
図書館システム関係については、Head of Library SystemsのDaniel Ferrerさんと会見しました。
CMUの図書館には利用者用コンピュータが360台、情報コンセントが1,500個もあるそうです。そんなにたくさんがあると、
管理も大変ではないですかと聞いたところ、90分間使われないと自動的に再起動するプログラム「ディープフリー(?)」が入っているし、
「ゴースト」というプログラムで360台のコンピュータの状態を監視しているとのことでした。
さらに、親指ほどの大きさで、USB端子に接続するだけの持ち運びのできるドライブ・ディスク「フラッシュ・ドライブ」を強く薦めていました。
これはフロッピー・ディスクより記録容量が多く、速く、落としても大丈夫で、パソコンを持ち運ぶ代わりになるほど便利なものとのことです。
しかも20~30ドル(2,3千円)と、金額も手頃だとのことです。この「フラッシュ・ドライブ」を使えば、
館内のコンピュータにインストールされている各種ソフトウェアのバージョン・アップなど簡単にできるようです。
なお、Danielさんはそのことについて、雑誌に論文を発表したことを自慢していました。
収書関係については、Head of Collection DevelopmentのPamela Grudzienさんと会見しました。
購入予算の70%が雑誌、30%が図書だそうで、すべて分野ごとの専門司書が選書しているとのことです。
また、外国雑誌価格高騰により700タイトル減ったとのことで、日本だけでなくアメリカでも同じような問題で悩んでいるようです。
なお、Elsevier社に対しては、アメリカではコンソーシアムを組めないため、
コンソーシアムを組んで契約している日本の大学はラッキーだとのことでした。
技術部門関係については、Head of Technical ServicesのJohn Riddickさんと会見しました。
蔵書冊数は約100万冊で、そのすべてがOPACに登録されているという素晴らしい状況です。これを聞いてつい、
蔵書75万冊のうち登録率がようやく60%を超えたばかりの本学図書館を思い浮かべてしまいました。
なお、目録作成は外注(OCLC)ですが、経費はとても安いとのことで、外注することによって職員5人を解雇したそうです。
Johnさんは、今やここではほとんど目録をとらないから、私にはその能力がないと冗談半分で話してくれました。
なお、利用者が貸出中の図書を紛失した場合には、本代の他に45ドル(4,500円以上)の罰金が科せられる他、返却しない学生には、
単位を出さない、新学期に履修登録できない、また卒業後は成績証明も出さないなど、かなり厳しいペナルティが課せられると聞き、驚きました。
それだけ図書館に権限があるのか、あるいはそれほど重大なことだという学内の共通認識があるからでしょうか。
1954年設立のClarke Historical Libraryは図書館1階の一角にあり、館長のFrank Bolesさんに案内していただきました。
ここの主な所蔵資料は、ミシガン州の郷土資料、アメリカン・インディアン資料、そして児童文学関係資料で、
ちょうどHemingwayの企画展を開催しているところでもありました。また、Mark Twain関連資料室もありました。
いろいろ見せてもらいましたが、中でも全米でもいくつかしかないというリンカーンの手(拳)の像にはびっくりしました。
リンカーンの手
さらにここでは、地方新聞保存の全米モデルとして「マイクロフィルム・プログラム」事業を行っていて、
35万ドル(3,500万円以上)の助成金を得て、ミシガン新聞のマイクロフィルム化を行っており、そのためのマイクロフィルムの作成室がありました。
学内施設案内は、昨晩ご一緒したReference LibrarianのRobert A. Faleerさんに案内していただきました。
その中に音楽芸術棟もありましたが、ここにも資料室があり、ここの資料は図書館のOPACで検索できるとのことでした。
また、学内には日本の大学生協のような、食堂や売店の入ったBookstoreもありましたが、
大学の名前やマークが入ったグッズの多さにはびっくりしました。
学内を案内していただいている時目に付いたのが、建物の入口にある禁煙の掲示です。建物の中が禁煙というだけでなく、
建物から25フィート(約7.6メートル)以内が禁煙となっており、その厳しさを感じました。
建物入口の禁煙表示
二日間の締めくくりとして、最後に館長のThomas J. Moorさんと会見しましたが、大学全体としては予算削減が大きな問題だそうです。
2、3年前に大学予算に占める州からの交付金の割合が60%から40%に下がり、またさらに州からの交付金が削減される計画があるそうで、
会見したこの日も学内の会議でその話題が出たそうです。
実際、ここの図書館も数年前から閉館時間を2時間ほど切り上げ、開館時間を短くしたそうです。
しかし、図書館では常に地元の企業や卒業生に寄付・援助をお願いしており、年間予算の5%に当たる約365,000ドル(3,650万円以上)、
つまり一日当たり1,000ドル(10万円以上)の寄付金を獲得しているとのことでした。
このような資金集めは、今や館長の仕事の25%を占めるそうです。館長自身、
司書になった時はまさかこんなことをするとは思っても見なかったが、今は楽しくやっているとのことでした。
2年前の増改築時には、地元の企業から500,000ドル(5,000万円以上)の寄付もあったそうで、
そのような高額な寄付によって設置された部屋や建物には、誠意を込めて寄贈者名を冠したりするそうです。
現在も250,000ドル寄付の話が進行中だそうで、大富豪が自分の財産の一部を社会に還元するアメリカの国民性とでもいうものをかいま見た思いでした。
後で気がつきましたが、ホームページでも寄付金募集を載せていました。
これでまず1大学が終わってほっとしたものの、実は一つ気がかりなことがあったのです。それは明日の移動日、
ここマウント・プレザントからランシング空港までどうやって行ったらいいかということです。CMUから事前にもらっていた日程表にも、
到着した時の迎えは明記されていたにもかかわらず、その日程表の最後は本日の夕食までで、明日の移動に関しては何も書かれていなかったためです。
ランシングとマウント・プレザント間には公共交通機関がなく、迎えに来てくれたのだから、帰りも送ってくれるだろうと独断しつつも、
勝手に帰れということだったらどうしようと不安でしたが、幸い明日も送ってくれることになっていると聞いて、ほっとしました。
そして夕食は、今回の訪問で一番お世話になったGuilan Wangさんとご一緒しました。WangさんはDirector, Office of International Education
(中国語の役職名、国際教育部主任)で、日本食が少しは食べたくなった頃だろうからと気遣っていただき、中華料理店に連れて行ってくれました。
日本の中華料理よりおいしくないかもとのことでしたが、私にとってはまずまずでした。
この店で、最後にフォーチュン・クッキー(Fortune Cookie)と呼ばれる、中に占いの紙切れが入っているお菓子を食べたのですが、
私の占いには “Luck is coming your way.” とあり、なぜか本当にいいことがありそうな気がして、とても嬉しくなってしまいました。
日本のおみくじで、日本語で同じような意味の言葉が書かれているのを見ても、きっとこんなに喜ばないでしょうから、不思議なものです。
なお、CMUでの二日間、通訳としてCMUの大学院を修了したばかりの日本人Hitomi Satoさんが我々の面倒を見てくださいました。
本当に助かりました。