さて、いよいよ出発です。1月17日(土)14時過ぎに成田を出発しましたが、日付変更線を超えるため、
デトロイト(Detroit)到着は現地時間の17日(土)昼の12時前でした。
アメリカのテロへの警備強化の一環として一段と入国審査が厳しくなり、
1月5日以降はビザを取得した入国者には顔写真の撮影と指紋採取が義務づけられたことを事前にニュースで聞いていましたので、
我々もその覚悟でデトロイトの入国審査ゲートに並んでいましたが、公用旅券のおかげでしょうか、顔写真も指紋採取も免除されただけでなく、
普通誰でも必ず質問される入国目的、滞在日数等も全く聞かれず難なく通過することができ、ほっとしました。
ここから飛行機を乗り換えて、CMUの最寄りの空港ランシング(Lansing)に到着したのが15時半でした。
空港ではCMU職員のご主人で日本人のYoshifumi Nakajimaさんの出迎えを受け、CMUのあるマウント・プレザント(Mount Pleasant)
まで車で送っていただきました。
そうしてようやくCMUキャンパス脇のホテルに着いたのは、夕方の17時でした。
日本との時差は14時間ですので、成田を離陸してからホテル到着まで17時間かかったことになります。
心配していた時差ボケも二人ともそれほど気にはならず、安心しました。
翌18日(日)は休養日。朝から快晴のいい天気でしたので、近くを散策することにしました。
長靴がないと歩けないほど雪が積もっていましたが、除雪がそれなりにされているため大丈夫でした。しかし風がめちゃくちゃ冷たい。
二人とも帽子を用意していなかったので、寒くて頭が痛くなるは、耳はちぎれそうに痛いはで、30分くらいでもう我慢できず、
近くのスーパーに帽子調達と保温のために立ち寄るほどでした。
確か事前に、マウント・プレザントはその地名にもかかわらず、山がないために風が強く、盛岡よりも寒いと聞いてはいましたが、
これほどとは思いませんでした。後でよく考えてみたところ、道路上の温度表示(華氏)が摂氏に換算するとマイナス10度以下だったようです。
町には2階建てより高い建物はほとんどなく、住宅街ではリスを見かけるほどのんびりした雰囲気です。
それにしても歩行者は我々二人だけで、他には見当たりません。地元の人は皆、自動車で移動しています。
また、その自動車は日本と逆の右側通行ということで、道路を歩いていてもなかなかその感覚に慣れることができず、交差点や、
あるいは近くで車の音が聞こえてくると、思わず緊張させられました。
それにしても、こちらの融雪剤の粒が大きいのにはびっくりしました。大きいと効き目があるのか、車も結構スピードを出していました。
結局この日、4時間以上は歩きましたので、歩行距離は20キロ近かったと思います。
1月19日(月)、いよいよCMU訪問です。朝8時半に、メールでもやりとりした館長秘書のSherry E. Coleさんが車で迎えに来てくれました。
キャンパス内は昨日散策しているので、図書館も確認済みです。そのとき除雪していた空の駐車場は、今日はほぼ満車状態。
クルマ社会アメリカの一端を見た思いでした。
図書館に入ると1階入口のメイン・カウンター(総合案内)では、我々の訪問を歓迎する立て看板が目に飛び込んできて、
多少気恥ずかしく思うと同時に、その心遣いに感動しました。
訪問を歓迎する立て看板の前で
(左・筆者、右・菊地専門員)
顔合わせのWelcome/Morning Receptionのために4階の館長会議室に案内されましたが、朝9時前だというのに、館内には多くの学生がいます。
ここの開館時間は朝7時50分ということだから不思議ではないのですが、それにしても朝からこんなに多いとは、
と本学図書館の朝の光景と比較してしまいました。
このWelcome/Morning Receptionには、館長のThomas J. Moorさん、副館長のAnne Marie Caseyさんを始め、各部門の長が出席されましたが、
総勢10名ほどに囲まれた途端、菊地専門員と二人、えらいところに来てしまったものだと、極度の緊張を覚えたものです。
こうして、二日間の研修が始まりました。
Welcome/Morning Receptionの後、Manager, Library Business ServicesのGerry Edgarさんに館内を一通り案内していただきました。
CMUの図書館は2年前に増改築した新しい図書館ですが、直方体の旧館部に円筒形の増築部を組み合わせた総4階建ての建物で、
ベージュに統一された旧館のタイル壁画と、青空や、
周囲の風景を鮮やかに映し出している増築部ガラス窓の湾曲面がほどよくマッチした斬新なデザインです。
図書館(東側)
建物内部は階毎に絨毯の色を異にした派手なものですが、円筒形の中央部が4階まで吹き抜けになっているおかげでとても明るいのです。
館内4階の吹き抜け部分
3階雑誌閲覧室(目が疲れるほどの派手な絨毯)
増改築時の総建築費5,000万ドル(50億円以上)、閲覧席数は2,650席、閲覧室の一般書の書架はすべて電動集密書架で、
その棚板の総延長距離33マイル(約53㎞)など、想像もつかないような数字に驚かされました。
館内にはメイン・カウンターが1階にあるほか、2階には貸出カウンター、コースリザーブ専用カウンター、
レファレンス・カウンターの3つがあります。
さらに自動貸出装置が1階と4階に1台ずつありましたが、1階の1台は設置場所の関係か、あまり使われておらず、
全体として貸出カウンターと自動貸出装置の利用率は半々ではないかとのことでした。このままの状態が続けば、経費削減の一環として、
1階の1台については撤去も検討すべきとのことでした。これから自動貸出装置を導入する本学の図書館としては、
設置場所については十分考慮する必要があると感じました。
グループ学習室は20室あり、朝から学生が多数利用していました。
1階入口付近には飲食に対する利用者への配慮なのでしょうか、カフェがあります。
なお、館内には飲食禁止のポスターがありましたが、飲み物については倒れても中身がこぼれないキャップ付きの容器であれば、
OKとのことです。本学の図書館ではすべて不可にもかかわらず、缶やペットボトルのごみが目に余る状況を考えると、
同様に緩和してもよいかとも思えました。
飲み物持ち込み可否のポスター
また、講演会やシンポジウムのための144席を備えるオーディトリアムは、とにかく立派なホールでした。
増改築する前は、学生は必要に迫られて図書館に来ていたようだが、今では、学生が喜んで図書館に集まってくるようだと、
言っていましたが、施設・設備など外面的なことに限らず、提供されるサービスも含めて学生を引きつけるだけの魅力ある図書館は、
理想的な姿ではないでしょうか。
ここでCMUの概要を説明します。
CMUはミシガン州の真ん中マウント・プレザント市にあります。マウント・プレザント市は人口約25,000人、大学とカジノの町で、
カジノはミシガン州最大規模だそうです。
CMUは教員養成学校として1892年に創立した州立大学ですが、現在は7学部、学生数約19,000人のほかに、
College of Extended Learning(CEL)という遠隔学習学部とでも言うオフ・キャンパスの学生が8,000人以上います。
CELはオフ・キャンパスの学生にオンラインで授業を提供しています。
Web授業をサポートするコースウェア作成ツールには「ブラックボード」(ソフトウェア?)を使用し、
教官はここに課題を出したり必要な資料を紹介したりするとのことです。
さて、昼食はそのCELの学部長Marcia Bankirerさんと副学部長のD. Terry Rawlsさんとご一緒し、その後、
大学キャンパスとは少し離れたところにあるCELの本部も案内していただきました。
また、帰りにはCMUの学長宅前も案内していただきました。車通りの少なそうな町外れの場所でしたが、
そこも市道のためか、ここにまで除雪車が来るとのことでした。
続いて午後は、そのCEL所属の学生、教職員を対象に図書館サービスを提供しているOff-Campus Library Services(OCLS)について、
Director of OCLSのJulie Garrisonさん、OCLS LibrarianのDan Gallさん、Connie Hildebrandさんらから説明を受けました。
このOCLSは1976年にスタートし、Reference and Instructional ServicesとDocument Delivery Servicesを大きな柱としています。
Referenceは電話、FAX(いずれもフリーダイヤル)、メール、Webのリクエスト・フォーム、そしてチャットでも可能です。
ちなみに2003年9月の受付件数は、Document Deliveryが3,967件、Referenceが604件(内Chatが23件)だそうです。
また、ここのReference Librarianは学生に情報リテラシー教育を行っており、各地に出張して授業をしています。
さらに、マウント・プレザント以外の4か所(デトロイト、ワシントン・DC、アトランタ、カンザスシティ)にも事務所があり、
各地に職員が一人あるいは二人常駐して、その近辺の教室で情報リテラシー教育を行っているとのことです。
CELのコースリザーブをコースパックと呼んでいますが、コースパックの論文をスキャナーで読みとりWeb(「ブラックボード」)に
フル・テキストを載せてもいるそうです。そのため、専門担当職員が著作権処理に従事しています。
ところで、OCLSの予算は図書館からではなくCELから出ているそうですが、CELの学生はオン・キャンパスの学生より学費が高く、
CELには予算が充分あるとのことです。
他大学でもOCLSをしているところはあるそうですが、そちらとの大きな違いは、メイン・ライブラリーと完全に分かれて、
専任スタッフで運営していることだそうです。職員もここだけで7人プラス学生アルバイト10人がいます。
また、2年毎に開催されるOCLS ConferenceをCMUが主催しており、300人以上の司書が、アメリカ国内だけでなく10ヵ国から参加しているそうで、
ちょうど今年5月にアリゾナで第11回大会があるから、もし良かったらどうですかとお誘いいただきました。
長い第1日目が終わり、夕食にはミシガン州最大規模のカジノの中にあるレストランに、Reference LibrarianのRobert A. Faleerさんと
OCLS LibrarianのConnie Hildebrandさんに連れて行ってもらいました。
夕闇せまる頃、小さな田舎町から郊外へしばらく行くと、突然けばけばしく輝くネオンのゲートが姿を現し、それをくぐって行くと、
カジノが開催されているという、超高級ホテルの前で車は止まりました。
中では大勢の人たちがいろいろなゲームに興じていて、熱気でムンムンでした。
アメリカのカジノと聞くとちょっと怖いようなイメージでしたが、そこは女性や子どもも家族で楽しんでいる、そんな娯楽施設でした。
カジノの入口
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