他機関から赴任してきて

図書館資料管理グループ 檜原 啓一

  

2011年4月。人事交流により東北大学から赴任してきました。当時は、東日本大震災の影響により物流も滞りがちで、とくにガソリン不足は深刻でした。引っ越しもままならず、4月は盛岡と仙台の二重生活。正直、「とんでもない時期に赴任してしまった」という思いがありました。
 そんな中、感動すべきこともありました。図書館は、震災により建物にヒビなどの被害はあったものの、資料は書架に戻されており、見た目には平常に復している感がありました。「赴任して最初の業務は復旧作業」と覚悟を決めて盛岡に来たのに、初動の復旧作業は完了しており、いい意味で裏切られ、「なんとすばらしいスタッフがいるのだろう」と感動したものです。

 さて本題です。
 人事交流等で学外異動することの意義を考えてみましょう。あくまでも組織からみた功罪ではなく、赴任した個人としての見解です。

 人は、自分の経験をもとに判断を下します。言い換えれば、同じ場所に長くいると、その環境がスタンダードになりがちです。実際、私も大学図書館といえば東北大学附属図書館をイメージしていました。新天地に移ることにより、その概念は覆されます。大学のミッションやポリシー、規模、図書館情報システムを含めたシステム環境、大学内での図書館の位置づけ、業務内容、等々の違い。もちろん、それらは想定できたことではありますが、心の中では「同じ国立大学の図書館でもあり、そう大差はないだろう」という思いがありました。
 赴任先でそれらのギャップに直面し、「何で違うの?」「前はこうだったのに」と愚痴るばかりでは、自らの成長は望めないでしょう。
 私の場合は、これらの機会を転機と捉えるように心がけています。
 例えば、これまでとは違った図書館情報システムに触れるチャンスであり、図書館資料に対するこれまで気付きもしなかった考え方に接するチャンスであり、新たな人的ネットワークを広げるチャンスであり、他にも自分に利することが多々ある機会、つまり、自らの視野を広げ、自らを成長させる機会と成り得るのです。

 上記の考え方は、何も学外異動に限ったことではありません。部局間の異動だったり、担当替えだったり、他機関で開催される研修に参加したりと、いつどこでその機会がめぐってくるか分かりません。
 新しい環境や体験は、誰にでも抵抗感や不安感がつきまとうものです。しかし、それらも含めて、自らを成長させる糧にしていきたい。また若いスタッフにも、そのような機会を捕らえて、成長していってほしいと思います。

 

 

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