氏 名 | わん じゃん 王 江 |
本籍(国籍) | 岩手県 |
学位の種類 | 博士 (農学) | 学位記番号 | 連研 第478号 |
学位授与年月日 | 平成21年9月25日 | 学位授与の要件 | 学位規則第5条第1項該当 課程博士 |
研究科及び専攻 | 連合農学研究科 生物環境科学専攻 | ||
学位論文題目 | 中国における協同組合的農村金融の新段階と発展 ( The New Stage and Development of China's Cooperative Rural Finance ) |
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論文の内容の要旨 | |||
1990年代後半に入ってから、中国における農村信用社は初めて農業銀行から分離され、 協同組合的農村金融組織に向かう独立的経営を始めた。 しかし協同組合原則と市場原理を貫く協同組合的農村金融組織への再編は困難なこととなったため、 2003年6月から、多様な財産権制度という目標の達成を基本原則とする改革が始動した。 本研究は、1)各段階の農村信用社改革は如何に展開されているのか、 2)改革の展開に伴い、再編された農村信用社の組織性格、組織構造、機能と役割、経営管理の実態が如何になられているのか、 3)農村信用社が如何に位置づけられているのか、などについて、調査地における統計分析と実証研究に基づいて解明を行った。 また本研究は、2006年年末から開始した中国農村金融自由化の背景と発展要因を踏まえ、 農村資金互助社の設立の方法、組織性格、組織構造、資本構成、融資構造、機能と役割、展開の現状とその経営の実態を明確にした。 さらに、中国における協同組合的農村金融の現状を把握したうえで、現在の中国農村金融改革、協同組合的農村金融の展開、 並びに農家協同組合の発展すべき道について、多少の示唆を与えることを今後に残された課題とした。 具体的には、次のまとめのとおりである。 序章では、中国における協同組合的農村金融の必要性についての分析を行い、今までのそれに関する研究の現状を述べ、 本研究の課題意識、研究の構成、研究の方法などを明らかにした。 第一章において、農村信用事業を取り巻く情勢の変遷を整理したことを通じて、 中国の「三農」経済からの資金需要が拡大している、農村金融の機能が不足している状況を明らかにし、 中国における農村資金の需給はアンバランス状態に陥っている結論に達した。 第二章では、農村信用社を主な対象として、1996年以降の改革の経緯を整理し、改革の特徴を帰納し、 農村信用社システムにおける組織制度の変化についての分析を行い、中国農村金融改革の展開の実態を確認した。 第三章において、農村信用社の「三農」経済発展にサービスするという側面から、改革の成果や、その経営課管理の現状、 存在している問題および将来の発展傾向について分析をした。 第四章では、中国農村金融の自由化の背景と発展の要因についての分析を行い、新型農村金融組織の設立に対する政策の主要な内容と、 新型の協同組合的農村金融組織として設立された農村資金互助社に関する政策を紹介した。 その上で、農村資金互助社の協同組合的農村金融組織である組織性格について確認した。 第五章においては、吉林省梨樹県閻家村農村資金互助社の事例を用いて、資金互助社の設立の方法や、 資金互助事業の展開の経緯と実態を紹介したうえで、資金互助事業の拡大によりもたらされた効果及び問題点について分析した。 また、今後の協同組合的農村金融の発展の道を模索し、それに関する研究の手がかりを探し、多少の政策提言を示唆した。 終章では、各章の内容を要約した上で、次のことを指摘した。 協同組合的農村金融の展開・発展について、 1)組織の設立の自由性と組織の機能性が政策当局側、特に銀監会からの影響は大きく、短期間に大きな変化はないであろう。 2)協同組合的農村金融の展開は、会計管理の強化、金融効率化と経営利潤化の追求、 内部融資と外部資金調達などの総合的機能の拡大を強化すべきである。 3)専門的な金融組織として設立の方式をやめて、農民専業合作社の展開・発展に伴い、 その事業の一種として行われる、という形に接近する方針転換の必要性が、 今後農民協同組合と協同組合的農村金融に関する研究の重要な課題になると考える。 |