韓国では、雑穀は日本以上に生産され消費されているが、アワ、ヒエ、キビの健康機能研究はほとんどされていない。
韓国産キビの健康機能の研究は、全くされていないのが現状である。
本論文は、マウスにおける韓国産キビの血糖値制御、脂質代謝改善機能及びアディポネクチン、
インスリンレベルやこれらの因子に影響を与える遺伝子発現への影響を明らかにすることを目的として検討を行って、
次のような新規な研究成果を明らかにした。
1) 韓国キビの精白粒の成分は、主成分は炭水化物であり70.6%であった。
次にタンパク質12.4%、脂質4.4%、灰分1.4%、及び食物繊維が3.7%であった。
キビタンパク質濃縮物の成分組成は、タンパク質が54.4%、脂質6.7%、灰分2.8%、糖質31.9%及び食物繊維が12.3%であった。
キビタンパク質のアミノ酸組成は、グルタミン酸、アラニン、ロイシン多く、リジン含量は低い値であった。
キビタンパク質のタンパク質組成は、主にグルテリンから構成されており、次に、プロラミンが14.9%であった。
2) C57BL/6J系マウスを用いて、高コレステロール食餌を与えて高コレステロール血症を誘導させた時の、
キビタンパク質の脂質代謝に及ぼす影響について調べた。
その結果は、正常食餌条件で、キビタンパク質濃縮物の摂取は、カゼイン摂取群に比べて、血漿中のHDL-コレステロール濃度を有意に高めた。
3) C57BL/6J系マウスに、高脂肪食餌を与えて肥満を誘導させた時の、
キビタンパク質摂取による血糖値制御及び脂質代謝に及ぼす影響について検討した。
その結果、キビタンパク質濃縮物の摂取で、カゼインと比べて、血糖値と血漿中のトリグリセリド濃度を有意に低下させ、
又、有意差は認められなかったものの腎臓周囲脂肪組織の重量を減少、血漿中グルコール濃度、肝臓中の脂質濃度の低値を示した。
4) 2型糖尿病に対する効果を明らかにするために、肥満型遺伝子2型糖尿病モデルKK-Ayマウスを用いて、
正常食餌組成のキビタンパク質飼料を与えた時の血糖値制御、脂質代謝、アディポネクチン、
インスリン及び脂肪組織での遺伝子発現に及ぼす影響について検討した。
キビタンパク質濃縮物の摂取で、カゼインと比べて、血漿中HDL-コレステロ?ル濃度が有意に高め、
肝臓中トリグリセリド濃度を有意に低下させた。
又、キビタンパク質濃縮物の摂取は、アディポネクチン受容体AdipoR1、AdipoR2の遺伝子発現を高める傾向を示した。
5) 2型糖尿病を更に悪化させる栄養条件で、キビタンパク質の効果を調べるために、KK-Ay マウスに、
欧米型の食餌モデルである高脂肪食餌を与えた時の血糖値制御、脂質代謝、アディポネクチン、
インスリン及び脂肪組織での遺伝子発現に及ぼす影響について検討した。
キビタンパク質濃縮物の摂取で、カゼインと比べて、血糖値及び血漿中インスリン濃度を低下させ、
血漿中のHDL-コレステロール及びアディポネクチンレベルを高めた。
更に、脂肪細胞の遺伝子発現レベルを調べた結果、キビタンパク質濃縮物の摂取は、アディポクチン、
PPARy 及びAdipoR2の遺伝子発現を高め、悪玉アディポサイトカインであるTNF-α 、IL-6の遺伝子発現量を低下させた。
6) 機能成分を明らかにする目的で、肥満型2型糖尿病モデルKK-Ayマウスの高脂肪食餌条件で、
キビデンプン画分を摂取させると、飼育最終日の血糖値が減少し、血漿中アディポネクチン濃度が高まった。
7) 機能タンパク質成分を明らかにする目的で、肥満型2型糖尿病モデルKK-Ayマウスの高脂肪食餌条で、
キビプロラミン画分を摂取させたが、アディポネクチンレベル及びアディポサイトカイン遺伝子発現には顕著な変化はみられなかった。
韓国産キビタンパク質が、HDL-コレステロールやアディポネクチン濃度を高め、
インスリン濃度を低下させ、更に脂肪細胞のアディポクチン、PPARy 及びAdipoR2の遺伝子発現を高め、
悪玉アディポサイトカインであるTNF-αの遺伝子発現量を低下させた機能は、本論文が初めてである。
以上の本論文の結果から、HDL-コレステロール及びアディポネクチンの肥満、動脈硬化症やインスリン抵抗性、
2型糖尿病の改善機能を考慮すると、韓国産キビタンパク質は、肥満の抑制及びインスリン抵抗性、
2型糖尿病の進展を遅延・改善、回復させる機能を有する新規な機能性タンパク質であると結論した。
これらの結果は、上記の病気や症状を緩和、改善する有効な食品素材となる可能性を示した。
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