近年、河川環境おいては,コンクリート三面張水路などがもたらす生態系の貧化が批判されている。
特に、農村域の生態系創出・保全にはため池と水路のネットワークは大きな意義を持つが、
コンクリート護岸では形成される生態系が貧弱となり、ネットワークの幹線としての機能を果たすことが困難である。
そこで、河川護岸や水路を対象とした多くの多自然化護岸工法の開発や,木杭や石積みなどによる従来型護岸工法の見直しがなされている。
本研究では、多自然化護岸工法の一つとして開発が進められるポーラスコンクリート(以下,POC)に着目し、
製造方法の考案および検証と水路護岸として適用した場合の生物生息環境の特性ついて、以下の検証を行った。
■製造方法および素材特性
一般に、POCの開発は5-20mmの粗骨材を用いて進められている。
しかしながら、動植物の生息環境には内部に形成される空隙径は大きいことが望ましい。
そこで、通常のコンクリート用骨材として流通している中で、最も粒径が大きい20-40mm骨材を用いたPOCの製造方法を考案・検証した。
その結果、POCに必要とされる強度(圧縮強度10N/mm2)を満たす配合およびフレッシュ性状を明らかにすることができた。
また、バインダーには細骨材を用いることで乾湿の繰り返しなどの耐性が向上することや、
フレッシュ性状の簡易的な評価手法、溶出するアルカリの中和方法、空隙の評価手法の考案と検証を行った。
リサイクル骨材を現場内で用いる工法についても新たに考案し、必要な建設機械と効果の検証、
ステージミキシング工法と骨材洗浄工法の確立を行った。
■ 施工方法
これまで、現場打設はバックホーを利用した工法が一般的であったが、施工効率や均平度が低くなる傾向にあった。
そこで、市販コンパクターとストライカーチューブを傾斜地用に改良し、大規模施工にも対応でき、
かつ均平度も高くなる工法を確立した。
また、2次製品であるPOCパネルにEPSを組み合わせた施工法を考案し、寒冷地における凍上防止層としての有効性を確認した。
■ 室内実験による植物生育特性の検証
人工気象室を用いた植物実験により、20-40mm骨材を用いたPOCは対照区に対して60-70%の植物生育量があること、
同じ空隙量でも空隙径が小さくなることで植物の草丈も低くなることが明らかとなった。
また、充填材にはアルカリ緩衝効果が高い黒土が有効であることを確認した。
■ 野外実験による生物生息環境の検証
屋外実験および実際適用した圃場水路に成立した植生を調べたところ、
水分の供給が容易となる水際を中心に植生が形成されることが明らかとなった。
また、POCの空隙径が大きいほど定着する植物種が増加する傾向も見られた。
この他、水生昆虫は水路中央部の底泥域と比較して水路水際の植生域に多く生息し、
多様性の点についても植生域が良好であることや、
水路床に砂礫が堆積することで生物相の多様化が生まれることも明らかとなった。
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