氏 名 シュイ ジェンポウ
徐  剣波
本籍(国籍) 中国
学位の種類 博士 (農学) 学位記番号 連研 第405号
学位授与年月日 平成20年3月21日 学位授与の要件 学位規則第5条第1項該当 課程博士
研究科及び専攻 連合農学研究科 生物生産科学専攻
学位論文題目 切り返し剪定したリンゴ幼木の新梢成長に関する研究
(A study of the shoot growth in young apple trees after pruning)
論文の内容の要旨

 本研究では、リンゴ樹の新梢成長における頂部優勢の機構を明らかにするために、 切り返し剪定を行ったリンゴ幼木における新梢成長に関係する要因について研究を行い、以下の結果を得た。

 1.1年生のリンゴ樹の主幹について切り返し剪定を行うと、5月までは、新梢の位置に関係なく、 個々の新梢長の差は小さかったが、6月には上部の新梢が下部より大きく成長し、 最終的には上部の3本程度の新梢が下部の新梢より優勢に成長した。 これらの新梢成長には、6月までに貯蔵窒素を利用したが、新梢長と15Nexcess%の間には相関が認められなかった。 新梢長と新梢の13Cexcess%の間には弱い負の相関が認められたが、相関係数は小さかった。 また、6月から新梢の13Cexcess%は急激に減少し、貯蔵炭素の利用期間は短かった。 新梢長と15N分配率(%)および13C分配率(%)の間には5月~9月にかけて有意な正の相関が認められた。 これらのことから、長く伸びる枝は、貯蔵された窒素あるいは炭素を相対的により多く利用していることや、 長い枝と短い枝では貯蔵養分と当年に吸収した養分の利用の度合いには差がないが、 特に、新梢成長には貯蔵された窒素の寄与が炭素に比べてより大きいことが明らかとなった。

 2.6月に新梢について遮光処理を行うと、遮光された新梢の成長は抑制され、 処理部位の下部の新梢は上部の新梢より大きく成長した。 一方、葉摘み区では、6月と7月に2回葉を摘み落としたが、 処理した新梢およびその他の新梢の成長に有意な変化はみられなかった。 樹1本における総新梢長は葉摘み区でやや高かったが、遮光による影響はみとめられなかった。 このことより、優勢に伸びる新梢は下部の新梢成長を抑制していることが推察された。

 3.異なる定植時期による根の状態の違いが新梢成長に及ぼす影響について調査したところ、 2006年春季定植区が2006年秋季や2007年春季区より全体的に新梢成長が旺盛となり、 2006年秋季および2007年春季区では上部と下部の新梢長の差が顕著であった。 また、3つの区とも上部の3本の新梢が下部の新梢より優勢に成長し、新梢成長の優劣関係には影響を与えなかった。 樹1本の総新梢長や平均新梢長は2006年春季定植区で他の両区より有意に大きかったが、 秋季と春季区の間には有意な差がみとめられなかった。 このような違いは、定植時期の違いによる根の状態の違いが関係しているものと考えられた。