氏 名 たかだ かずま
?田 一馬
本籍(国籍) 北海道
学位の種類 博士 (農学) 学位記番号 連研 第393号
学位授与年月日 平成19年3月31日 学位授与の要件 学位規則第5条第1項該当 課程博士
研究科及び専攻 連合農学研究科 生物資源科学専攻
学位論文題目 In vitro analysis of the molecular mechanism of trans-translation
( trans -translationの分子メカニズムの解明 )
論文の内容の要旨

 途中で切断されてストップコドンを持たないmRNAを翻訳するなど、 リボソームが翻訳の途中でそのタンパク質合成を止めた場合、そのリボソームを解消する機構がtrans -translationであり、 その反応で中心的な役割を果たすユニークなRNAがtmRNAである。 3'端にアラニンを付加されたtmRNAはtRNAとしてその止まったリボソームに作用し、 次いでmRNAとして機能することで翻訳反応を再開させ、tmRNA内のストップコドンでその翻訳反応を正常に終結させる。 しかし、このtrans -translation反応の分子メカニズムにはまだ不明な点が多い。

 本研究では高度好熱菌を用いた無細胞翻訳系を確立し、その実験系でtrans -translationに関わると考えられてきたタンパク質、 特にSmpB、EF-Tu、リボソームタンパク質S1について、その機能を調べた。

 ポリ(U)を鋳型としてポリフェニルアラニンを合成させる翻訳反応を観察する系を確立した。 マグネシウム濃度などの緩衝液を最適化し、効率よく「翻訳途中で止まったリボソーム」を調製することに成功した。 そのリボソームにAla-tmRNAとSmpBを加えると、SmpB依存的にAla-tmRNA由来アラニンのペプチドへの取り込みが見られた。 この反応はAla-tmRNAがリボソームのA-siteに結合しtrans-transfer反応を再現できたことを示す。 次に、Ala-tmRNA・SmpBと同時にtmRNAのmRNAドメインの最初のコドン(再開コドン)に対応するAla-tRNAを加えると、 SmpB依存的にAla-tRNA由来アラニンの取り込みが観察できた。

 このtrans-translationアッセイ系を用いてEF-TuとS1の効果を調べた。 EF-Tuはtrans-transfer反応の初速度を上げ、その効率を高める機能があることが明らかとなった。 S1はポリUの翻訳反応を促進したが、trans-transfer、再開コドン翻訳のどちらのステップにも必須ではなく、 促進効果も見られなかった。 このことから、S1はtmRNAに強く結合するが、trans -translationの初期段階において機能を持たないことを示唆する。