食品加工場や野菜選別場等から排出される水分含量の高い副産物は重要な飼料資源として期待されているが、
適切な保存技術の欠如によりその利用は制限されている。
本研究は、水分含量の高い副産物のサイレージ化による保存技術を確立し、飼料資源の拡大を図ることを目的とし、
これら副産物のサイレージ化適性、発酵品質の向上、排汁生成ならびに栄養損失の抑制、さらに調製されたサイレージの栄養価について
検討したものであり、下記の知見が得られた。
1.水分含量の高い農産副産物のサイレージ化適性を検討するため、野菜や果物由来の副産物の化学的・微生物学的特徴を調査した。
その結果、pH、pH緩衝能、付着乳酸菌数などは副産物によって異なっていたが、いずれの副産物も乳酸発酵に必要な水溶性炭水化物は十分に含まれていた。
これらのことから野菜や果物由来の副産物はサイレージとして保存可能であるが、水分含量が高いため排汁生成やそれに伴う
養分損失の抑制がサイレージ化する際の重要な課題であることを指摘した。
2.ジャガイモデンプン粕、ダイコン選別残渣、リンゴ粕等を用いてサイレージを調製し、乳酸菌ならびに水分調整剤の添加が
発酵品質ならびに排汁生成に及ぼす影響について検討した。
その結果、乳酸菌を添加しなくても良好な発酵品質のサイレージが得られることを示した。
さらに、乳酸菌添加による過度の乳酸発酵の促進はサイレージの保水力の低下による排汁生成量の増加を招くことを示した。
また、水分調整剤として小麦稈、豆殻、フスマ等を用いた結果、排汁生成量はサイレージ原料や水分調整材の水分含量や
潜在水分保持力(potential water retention capacity, PWRC,常圧条件下で原物100gあたり保持できる水の量)によって左右されることを示した。
さらに高水分農産副産物のサイレージ調製時における排汁生成量を推定する重回帰式を作成し、
排汁が生成されない原料の水分含量およびPWRCの理論値を提示した(水分含量は69%以下、PWRCは82.9g/100g以上)。
3.ジャガイモデンプン粕、ダイコン選別残渣用いて調製したサイレージを綿羊に給与してサイレージの栄養価や嗜好性について検討した。
その結果、ジャガイモデンプン粕サイレージの可消化エネルギー価は13MJ/kgDMであり、ビートパルプと同等のエネルギー価を有することを示した。
一方、綿羊によるサイレージの嗜好性は、水分調整材によって異なることを示した。
これらの研究結果から、野菜や果物残渣などの農産副産物は水分を多く含むが水溶性炭水化物含量が高いため乳酸発酵をしやすく、
エネルギー価の高い飼料資源であることが示された。
また、排汁生成抑制の基準が示され、サイレージ化による水分含量の高い農産副産物の効率的利用技術が提示された。
これらの成果は、未利用資源の利用による飼料資源の拡大やそれに伴う家畜生産の安定化、特に季節的に飼料不足が生じやすい地域における
飼料資源の確保と家畜損耗防止に貢献が期待できる。
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