氏 名 | いわせ しょういち 岩瀬 祥一 |
本籍(国籍) | 北海道 |
学位の種類 | 博士 (農学) | 学位記番号 | 連研 第358号 |
学位授与年月日 | 平成18年3月31日 | 学位授与の要件 | 学位規則第5条第1項該当 課程博士 |
研究科及び専攻 | 連合農学研究科 生物資源科学専攻 | ||
学位論文題目 | パンの生地物性と製パン特性との関連性 ( Relationship between physical properties of bread doughs and its baking characteristics ) |
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論文の内容の要旨 | |||
パン生地の力学特性は,製パンの各工程において重要な理化学特性であり,最終製品の品質にも強い影響を与えていることが 経験的に知られている。 そこで,パン生地の力学特性を測定する試験機としてファリノグラフやミキソグラフなどが従来から用いられてきた。 しかし,これらの試験機による測定値が装置に固有のものであるばかりでなく,パン生地の力学的挙動を詳細に解析するための十分な情報を与えず, パン生地の工程管理にこの測定値を直接に用いることができなかった。 近年,食パンの形態が非常に多様化しており,新しい商品を開発するに当たり製造の方法・工程の条件を試行錯誤で繰り返して検討していたのでは, この多様化・高度化に迅速に対応することが非常に難しい。 本研究では,パンの理化学的性状を生地の調製段階で制御することを目標として,まず製パン工程の進行に伴うパン生地の
物性変化を明確に把握できる物性評価法を検討した。
次に,パン生地の発酵条件がパン生地物性と製パン特性に大きな影響を与えていることに着目し,2次発酵時間を3水準(35分間,50分間,65分間)に
設定してパン生地を意図的に作り分け,これらのパン生地物性と製パン特性との関連性について検討することにした。
ストレート生地製法でパン生地を調製し,混捏直後,1次発酵直後,成形直後および2次発酵直後に試料を採取した。
1次発酵および2次発酵の進行に伴って酵母が産生する二酸化炭素ガス気泡の体積分率が増加することに起因してパン生地の比重が減少した。
2次発酵直後のパン生地の貯蔵弾性率(G')および損失弾性率(G")は成形直後のパン生地に比べて減少した。
この変化は,成形直後のパン生地では加工硬化のために内部ひずみが最大となり,パン生地は強く引き締められた状態であったが,
2次発酵によって架橋領域が増加し,パン生地の抗張力が適度に小さくなって伸展性が良好なパン生地に変化したことを示している。
10 Hzにおける誘電損失正接(tanδε )は,混捏直後のパン生地に比べて1次発酵直後のパン生地の方が小さかった。
また,この値は成形直後のパン生地に比べて2次発酵直後のパン生地の方が大きかった。
このことから,1次発酵によって二酸化炭素ガス気泡の体積分率が増加したために1次発酵直後のパン生地の方が混捏直後のパン生地に
比べて単位体積当たりの導電率が低下したと推察された。
また,2次発酵直後のパン生地では,二酸化炭素ガス気泡の体積分率の増加によるパン生地の導電率の低下,
ならびにパン酵母や乳酸菌が産生する有機酸の増加によるパン生地連続相の導電率の増加が同時に起きていると思われた。
したがって,電気抵抗に比べて電気容量が増加したため成形直後のパン生地に比べて2次発酵直後のパン生地の方が
単位体積当たりの導電率は増加したと考えられた。
また,パン生地の微細構造は,製造工程の進行と共に酵母の発酵による二酸化炭素ガス気泡の膨張に耐えられるように
グルテン網目構造が変化したと考えられた。
以上のことから,これらの測定値でパン生地の物性変化を明確に定量化できた。 |