氏 名 にしむら かずゆき
西村 和行
本籍(国籍) 北海道
学位の種類 博士 (農学) 学位記番号 連論 第108号
学位授与年月日 平成18年3月23日 学位授与の要件 学位規則第4条第2項該当 論文博士
研究科及び専攻 連合農学研究科
学位論文題目 北海道酪農における産乳能力および窒素利用性改良に関する研究
( Studies on genetic improvement for milk yields and nitrogen utilization in Hokkaido dairy cows )
論文の内容の要旨

 本研究は、乳中成分を中心とした乳牛育種および摂取された飼料からの窒素排出量の 低減を目指した、乳牛の選抜淘汰の可能性を目的とし、根釧地域と道立根釧農試に繋養された牛群、さらに、 北海道酪農検定検査協会に保存された情報を用いて、遺伝解析を試みたものである。

 研究1では、乳脂肪率およびSNF率の選抜差は地区1の低乳成分グループが高乳成分グループより大きく、 地区2では逆であったが、期待遺伝的改良量は負の値であった。 このことは、乳成分の改良は期待された通りではないことを示唆し、牛群内で高年齢のものが淘汰される 機会が多くなることが推察された。
 さらに、カゼイン遺伝子型による乳生産量への影響は、βラクトグロブリンではヘテロ型はホモ型より 低い乳生産量であった。 αs1カゼインではC遺伝子の有無が乳生産量への影響を及ぼした。 乳タンパク質量に関してはβラクトグロブリンのA遺伝子、αs1カゼインのB遺伝子の存在が 生産量を増加させた。

 研究2では、1群の牛群において、尿中に排出されたエネルギーを差し引いた代謝エネルギー(ME) 摂取量に対する乳のエネルギーと体蓄積エネルギーの比率をエネルギー効率(EE)として表現すると、 泌乳ステージの変化に直線的に対応し、泌乳中期における過小評価の問題が縮小させられたと推察された。

 研究3では、北海道全体の乳検情報から算出されたタンパク充足率に関わる推定値は、 エネルギー補正乳量を用いた推定式での当てはまりが高かった(R2=0.76~0.77)。 さらに、タンパク充足率および窒素利用効率に関する形質の遺伝率と反復率は予測粗タンパク充足率(DCPun)、 予測窒素利用率(DEVM)および推定窒素利用効率(NUE)で初産から3産で、0.16~0.21(遺伝率)、 0.43~0.67(反復率)であった。 乳量と予測粗タンパク充足率(DCPun)および予測窒素利用率(DEVM)間の遺伝相関については 一貫して負の値を示し、初産から3産まで-0.22~-0.46 へと移行し、産次が進むに従って、 よりタンパク利用性の高い個体が牛群に残留するということが予測された。 推定窒素利用効率(NUE)と乳量との間の遺伝相関は、初産から3産で、+0.19~+0.27 であった。 したがって、これらのタンパク転換能力が向上する方向への選抜への応用が可能で有れば、 余剰タンパク摂取量を増加させることがなくなり、過剰に窒素排出量を増加させることが可能な限り抑えることができ、 地球環境に優しい牛群を構成することが可能と示唆された。