氏 名 かきざき ともひろ
柿崎 智博
本籍(国籍) 秋田県
学位の種類 博士 (農学) 学位記番号 連研 第342号
学位授与年月日 平成18年3月23日 学位授与の要件 学位規則第4条第1項該当 課程博士
研究科及び専攻 連合農学研究科 生物資源科学専攻
学位論文題目 アブラナ科自家不和合性における花粉側優劣性の分子制御機構解明
( Molecular characterizaiton of dominance relationships in pollen in self-incompatible Brassica rapa )
論文の内容の要旨

 アブラナ科植物の自家不和合性は、S遺伝子座と呼ばれる1遺伝子座 S複対立遺伝子系により支配されている。 このS遺伝子座上には SP11 (S locus protein 11) と SRK (S receptor kinase) が 近接して存在しており、それぞれ花粉と雌しべの自他識別S因子をコードしている。 S遺伝子座は複対立遺伝子座であるため、S1S2S3・・・ Sn名づけられた対立遺伝子が複数存在する。 加えて、S遺伝子座は胞子体的に機能する遺伝子座であるため花粉(n)のS表現型が、 花粉の親植物体(2n)におけるS遺伝子間の優劣性によって決定される。 したがって、配偶子(n)である花粉においてS遺伝子の優劣性(花粉側優劣性)が観察される。

 本研究では、花粉側優劣性の分子制御機構を明らかにすることを目的として、分子遺伝学的な手法により解析を行った。 まず、4つのS対立遺伝子ホモ系統(Sホモ系統)から材料に花粉側S因子 SP11 を単離し、 遺伝学的な解析から単離したSP11 が対立遺伝子の関係にあることを明らかにした。 次に、材料に用いた4つのS対立遺伝子間に花粉側において直線的な優劣性関係が存在することを明らかにした。 言い換えるならば、S対立遺伝子間の優劣性関係が可塑性を持つことを見いだした。

 続いて、S対立遺伝子ヘテロ個体(Sヘテロ個体)では、劣性となる対立遺伝子由来の SP11 はその発現が抑制されている事を明らかにした。 劣性対立遺伝子の発現抑制は材料に用いた4つのS対立遺伝子に例外なく観察された。 さらに、4つのS系統において SP11プロモーター配列を含む広範囲にわたる領域の塩基配列を決定した。 これらの情報を元にSヘテロ個体におけるSP11プロモーター領域のメチル化解析をおこなったところ、 劣性対立遺伝子特異的に SP11 のプロモーター領域がメチル化を受けていることがわかった。 さらにS遺伝子座上にSP11プロモーター領域のメチル化を誘導すると考えられるヘアピン構造を同定し、 この領域がRdDM(RNA directed DNA methylation)を誘導する前駆体として機能している可能性が示唆されたため、 DNAメチル化を介する直線的優劣性の発生モデルを提唱した。