氏 名 ワン ジンイン
王  金印
本籍(国籍) 中国
学位の種類 博士 (農学) 学位記番号 連研 第333号
学位授与年月日 平成17年9月30日 学位授与の要件 学位規則第4条第1項該当 課程博士
研究科及び専攻 連合農学研究科 生物生産科学専攻
学位論文題目 リンゴ果台枝の花芽形成に及ぼす糖類とジベレリンの影響
( Effects of Sugar and Gibberellin Contents on Flower Bud Formation of Bourse Shoots in Apple )
論文の内容の要旨

 リンゴの花芽形成は着果により影響され、その原因として、ジベレリン(GA)や 同化産物の供給が関与しているとされる。 しかしながら、花芽形成期の頂芽における糖の働きについては報告がほとんどなく、不明な点が多い。 そこで、果台枝頂芽における同化産物の分配、糖の含量と組成および果台枝頂部のGAの含有量と花芽形成との関係について検討した。

 リンゴ’ふじ’と’恵’を用いて果そう当たり着果数と種子の有無が異なる処理を行い、 栄養成長と花芽分化に及ぼす影響を調査した。 果そう当たり着果数が多い果そうは、着果数の少ない果そうより、また有種子果の着生する果そうは 無種子果の着生する果そうより果台枝の生長が抑制された。 着果数の多い果そうほど果台枝頂芽の花芽分化を抑制した。 同じ1果処理でも、有種子果着生果そうは無種子果着生果そうより花芽形成が減少した。 さらに、着果による果台枝頂芽の花芽分化に及ぼす影響は、’ふじ’と’恵’ともに20cm以下の果台枝に 明確に現れ、それより長い果台枝では影響が小さかった。

 次ぎに、花芽形成期における果台枝頂芽への同化産物の分配、糖類とGAの含量との関係を検討した。 果台枝頂芽の新鮮重をみると、6月初めには着果数と種子の有無の違いにかかわらず同じだったが、 7月初めには無種子果着生果そうが有種子果のそれより大きくなった。 果台枝葉の同化産物の果台枝頂芽への分配は、種子よりも果実の存在によって影響され、 果そう当たりの果実乾物重が大きいほど減少した。 また、6月初めにおける果台枝頂芽の糖類含量も、着果の程度が強くなるほど減少した。 着果により頂芽内で減少する糖類は、ソルビトールとグルコースで、スクロースは変化しなかった。 6月初めにおける果台枝頂部のGA含量は、不着果と無種子1果の果台枝の方が有種子1果と3果の果台枝より低く、 着果よりも種子の存在により増加した。

 リンゴ’ふじ’と’恵’を供試して果台枝に対する環状剥皮処理を施し、果台枝頂芽の糖類含量と 花芽形成との関係について検討した。 その結果、’ふじ’と’恵’の両品種とも環状剥皮処理により果台枝頂芽の花芽分化率が有意に高くなった。 果台枝頂芽の新鮮重は、処理後3週から観察時期完了まで環状剥皮により有意に高くなった。 スクロース以外の糖類含量は、両品種とも処理後3週から9週まで環状剥皮の方が有意に高かった。

 これらの結果から、リンゴの果台枝における花芽形成にとって必要な要因は、種子から移行するGAが少ないこと、 そして、頂芽で生じる代謝に必要な同化養分が供給されることであると考えられた。