氏   名
佐藤 清忠
本籍(国籍)
岩手県
学位の種類
博士(工学)
学位記番号
工 第 25 号
学位授与年月日
平成 17年 9月 30日
学位授与の要件
学位規則第5条第2項該当 論文博士
研究科及び専攻
工学研究科 工学専攻
学位論文題目
リモートセンシング画像解析手法の開発と環境教育への応用
論文の内容の要旨

 リモートセンシング画像の解析手法として、表計算を利用した演算の形式の提案を行い、 それに基づく解析ツールを開発し、環境教育へ応用を行った。

 表計算はエンドユーザー向けの計算ツールとして普及している。 表計算ソフトウェアは安価であり、また習得しやすい。 また豊富な関数やグラフ表示機能を備えており、特定分野の解析ツールとして適した特徴を持っている。 この特徴をリモートセンシング画像解析による環境教育へ応用できるのなら、大変有益である。 しかし表計算を画像解析ツールとして利用する場合、さまざまな問題があった。 本論文ではこれらの問題を明らかにし、問題の解決策として画像演算の形式の提案を行った。 この提案に基づき、画像データセット及び演算モジュールの自動配置に関する開発と整備を行った。 さらにこれらの開発整備をもとに、画像解析による環境教育を実施し、提案内容の有効性の検証を行い、 改良を重ねてきた。 本論文では以上の経緯をもとに、リモートセンシング画像解析の手法に表計算の導入を行ったことに 対する総合的な考察を行う。

 第1章では、本研究の背景、研究の目的、論文の構成について述べる。

 第2章では、表計算プログラミングに関する研究状況を述べる。 M.Burnett(米Oregon大)らはエンドユーザー言語としての表計算の特徴や問題点に関する考察を 幅広く行っている。 五十嵐(東京大)は複雑な表計算の演算構造の保守の難しさに対し、データフロー・グラフによる演算構造の 可視化を行うことを提言している。 またB.A.Cooke(英Leicester大)らは、表計算の機能は教育応用に十分適していると述べている。 これら表計算に関わる研究成果を述べ、表計算の持つ優れた特徴や潜在的な問題を整理し、 画像解析を行うための問題点や開発課題を明らかにする。

 第3章では、表計算における画像データと演算の形式について述べる。 この演算の形式は、表計算の持つ特徴を引き出し、潜在的な問題を解決するために開発したものである。 表計算における画像演算の一般的な形式は多重画像に対する近傍演算である。 この演算の形式を基礎にして、派生してできる演算の形式がある。 またそれらの形式に含まれない特殊な演算の形式がある。 これらの事例と問題点について述べる。

 第4章では、前章の演算の形式に適合する画像データセット及び演算モジュールの自動配備の 開発と整備について述べる。 ここでリモートセンシング画像を用いた環境教育の目標を述べ、その目標に適した画像データセットの 仕様や保存形式、またリンク構造について述べる。 演算モジュールの自動配備では、単一画像の点演算、単一画像の近傍演算、多重画像の点演算、 多重画像の近傍演算に関する演算式配備の具体例を述べる。 また画像解析に関するその他の機能について述べる。

 第5章では、以上の開発成果による環境教育を行った事例を示す。 まず典型的なリモートセンシング画像解析事例の紹介を行い、地理情報と衛星画像の組み合わせによる 環境教育の実践例、さらにそれらを発展させた環境教育の応用事例を述べる。

 第6章では結論として、画像解析手法として表計算の導入を行ったことに対する総合的な考察を行う。 その結果、表計算では写像演算と同一の形式になる演算形式が、リモートセンシング画像解析による 環境教育に適したものであることを述べる。