氏 名 | 田中 孝 | 本籍(国籍) | 山形県 |
学位の種類 | 博士 (農学) | 学位記番号 | 連論 第97号 |
学位授与年月日 | 平成17年3月23日 | 学位授与の要件 | 学位規則第4条第2項該当 論文博士 |
学位論文題目 | 山形県におけるイネ苗立枯細菌病の発生生態と防除に関する研究 (Studies on Ecology and Control of Bacterial Seedling Blight of Rice Caused by Burkholderia plantarii in Yamagata Prefecture) |
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論文の内容の要旨 | |||
第二次大戦後のわが国の稲作技術は飛躍的に進歩し、収穫量も格段に増加した。 近代的稲作技術の一つに田植機による機械移植がある。機械移植技術の普及はイネの育苗法も大きく変化させ、 従来の苗代育苗から施設内での箱育苗へと移行させた。その結果として、それまでの育苗法では特に問題とならなかった、 イネいもち病、ばか苗病をはじめ多くの種子伝染性病害の突発的な発生が起こり、大きな問題となった。 それらの病害のうちイネ苗立枯細菌病は、1982年にわが国で初めて発生が報告された。 山形県においては1988年に初発生後急激に蔓延して大きな問題となった。本論文は、山形県におけるイネの 主要な種子伝染性細菌病であるイネ苗立枯細菌病の発生実態、本病の診断方法、野外での伝染経路および 効果的な防除法に関する長年の研究をまとめたものであり、概要は以下のようである。 1.山形県各地で育苗中に発生したイネ細菌病の発生調査を行い、その主な病害が苗立枯細菌病であることを明らかにした。 また、本病が山形県最上町を中心とした地域で頻発していることを突き止め、その原因を明らかにするため、 当地域の育苗環境に関するアンケート調査や、地域周辺の現地調査を進め、育苗施設の構造や管理の問題のほか、 水田周辺の雑草も重要な要因を担っていることを指摘した。 2.水田周辺雑草における本病細菌の保菌状況を検討し、複数の草本植物に潜在的に感染していること、 特にシダ植物のコウヤワラビが本病の伝染源として重要であることを見出した。 3.野外での本病の伝染におけるコウヤワラビの関与を実証するため、抗生物質の一種リファンピシンに 耐性の病原細菌を実験的に作成し、それをマーカーとしてコウヤワラビに人工接種して水田脇に設置し、本細菌の 水田での動態を追跡した。その結果、本病細菌が田面水に流れ込んだ後、イネの生育期を通じて地上部のそれぞれの 組織や部位に生存し、最終的にモミに感染することを証明した。さらに、本細菌汚染モミを通常の方法で保存後、 翌春に播種・育苗すると本病が発病すること、罹病苗組織からマーカー菌を回収したことで、伝染環の仮説を実証した。 4.育苗中における本病の発生防除法を検討し、化学薬剤としてオキソリニック酸水和剤の湿粉衣処理および カスミン粒剤の育苗土混和のほか、環境保全型の防除法として温湯種子浸漬処理が効果的であることを実証した。 |