氏 名 | 熊谷 智義 | 本籍(国籍) | 岩手県 |
学位の種類 | 博士 (農学) | 学位記番号 | 連論 第94号 |
学位授与年月日 | 平成17年3月23日 | 学位授与の要件 | 学位規則第4条第2項該当 論文博士 |
学位論文題目 | 市町村総合計画の策定課程への住民参加に関する研究 (Study on Resident Participation in the Process of Making the Municipality Comprehensive Plans) |
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論文の内容の要旨 | |||
本研究は、農村部に立地する町村を対象として、市町村総合計画の策定過程における 住民参加システムのあり方を明らかにしたものである。 はじめに、市町村総合計画における住民参加の歴史的な流れと関連研究の状況を整理し、住民参加システムの モデルとして、自治体の計画作成事務局に住民が参加して計画素案の作成に当たる事務局参加型、公募や部会方式の 導入により審議会の審議の充実を図る審議会充実型、計画素案作成の参考とするために住民アンケートや地区別懇談会、 まちづくり委員会等を通して住民意見を聞く住民意見聴取型の3つを設定した。 次にこれらの住民参加システムの検証を行うため、東北地方399市町村を対象としたアンケート調査を行い、 全市町村が上記の3類型に分類できることを示した上で、各類型ごとの特徴と課題を整理した。 続いて、次の事例調査により3類型の運用の実態を明らかにした。 第一に、事務局参加型の福島県会津坂下町では、町長の強力なリーダーシップの下で、公募の住民による 「まちづくり 2001 委員会」が計画素案の作成作業を担当した。本町の事務局参加型システムは、町長のリーダーシップ、 関係各課の「まちづくり 2001 委員会」への協力、事務局担当職員および住民側委員の住民参加経験の蓄積、および 専門家の適切な関与等により、有効に機能し、同委員会の検討結果が最終的な計画案によく反映される結果となった。 他方、岩手県田野畑村では、同じく事務局参加型システムを採用したが、村長のリーダーシップや事務局の会議運営 ノウハウ等に課題があり、十分に機能しなかった。同様に、岩手県安代町でも、町長の住民参加へのリーダーシップ、 担当者の姿勢、住民の経験、住民が参加する委員会での会議の持ち方、委員の人選などが必ずしも適切でなかったため、 住民の意見を十分に引き出すに至らなかった。これらの事例から、事務局参加型が機能するには、町長の姿勢、職員・ 住民の経験度、計画策定プロセス全体の設計や会議の運営ノウハウ等が必要なことが明らかとなった。 第二に、審議会充実型の岩手県胆沢町では、審議会の充実を図るために、審議会委員の3割を公募委員とし、 また女性委員比率を35%まで拡大した。さらに部会形式の採用、および部会と町職員との協働作業体制の構築の結果、 審議会は期待通りに活性化し、実質的な審議が行われるようになった。この事例から、審議会の構成や運営の工夫次第で 審議会が十分に活性化することがわかった。 第三に、住民意見聴取型の岩手県葛巻町では、町づくり委員会委員の一般公募、頻繁な会議の実施、提言書 「くずまき町づくりビジョン」の取りまとめ、町事務局と町づくり委員会の合同検討会(ワークショップ)等を通じて、 住民意見聴取型であっても、運用の仕方によっては住民意志をある程度反映した計画づくりが可能であるということが 明らかになった。 最後に、農村部の町村における今後の住民参加システムの参考とするために、住民参加に関して評価の高い 東京都三鷹市の事例分析を行った。その結果、住民参加の経験を積んだ市町村では、市民による策定委員会が実質的に 事務局の機能を果たすとともに審議会の役割までをも担うようになり、上記の3システムを融合した形態を取ることが 明らかになった。 以上の分析結果に基づいて、本研究では、前回の総合計画において採用した住民参加システムを基に、職員と 住民の経験度およびノウハウの蓄積を加味して、次の総合計画で採用すべき住民参加システムを選択する方法を提案した。 |