氏 名 ビカシュ サンドラ サーカル
BIKASH CHANDRA SARKER
本籍(国籍) バングラデシュ
学位の種類 博士 (農学) 学位記番号 連研 第329号
学位授与年月日 平成17年3月23日 学位授与の要件 学位規則第4条第1項該当 課程博士
研究科及び専攻 連合農学研究科 生物環境科学専攻
学位論文題目 ACCLIMATION OF ROOTING CHARACTERISTICS, WATER EXTRACTION AND LEAF GAS EXCHANGE UNDER ELEVETED CO2 INTERACTING WITH SOIL MOISTURE STRESS
(土壌水分ストレスを伴う二酸化炭素濃度上昇環境に対する根系特性、水分吸収および葉面ガス交換における順化)
論文の内容の要旨

 本論文は、地球大気の二酸化炭素濃度が現在上昇しつつあることに注目し、それが植物の 形態生理生育にどのように影響するのかを水ストレスとの相互関係において明らかにすることを目的としたものである。 そのため、大気二酸化炭素および土壌水分について、それぞれ、現濃度(370ppm)と2倍濃度(700ppm)および 灌漑の良否の計2×2=4種類の環境条件を設定して植物を生育し、植物体の巨視的ならびに顕微鏡的観察、 光合成速度測定、蒸散速度測定、プロリン量測定をもとに解析した。植物にはバングラデシュにおける主要作物である ナスおよびトマトを用い、実験により、つぎのことを明らかにした。

 1.現濃度(370ppm)二酸化炭素環境にくらべ2倍濃度(700ppm)二酸化炭素環境では、灌漑の良否にかかわらず、 根の生体質量、体積、表面積、長さのすべてが大きかった。このことから、2倍濃度(700ppm)二酸化炭素環境では 灌漑条件が悪くても現濃度(370ppm)二酸化炭素環境で灌漑条件良好な場合と比肩する生育が期待されるわけであるが、 このことが実験により肯定的に示された。

 2.「土壌水分率が低い場合、蒸散速度は根量・根長および土壌水分マトリックフラックスポテンシャルから 定まる最大吸水速度に制約される」という仮説がいずれの大気二酸化炭素濃度環境下においても成り立つことが、 測定と計算により、証明された。

 3.大気二酸化炭素濃度の高低にかかわらず、土壌水分ストレス下では根中のスベリン脂質の付着量が増加し、 これは根の水伝導率の低下に帰結した。これは植物体水分が根を通じて乾燥した土壌に奪われるのを防ぐという効果に 結びつくものと考えられる。

 4.2倍濃度(700ppm)二酸化炭素環境では、気孔の密度とガス伝導率が低下したが、光合成速度は増加し、 蒸散速度が低下した。水ストレスは葉の水分状態を改善し、プロリン合成を促進し、水利用効率を高めた。

 以上の結果は、現在上昇しつつある地球大気の二酸化炭素濃度が植物生育に与える影響の一端を水ストレスとの 関連から明らかにしたものである。

 よって、審査委員会は本論文を博士(農学)の学位論文に値するものと判定した。