氏 名 CHOI,You Trang
崔 酉榮
本籍(国籍) 大韓民国
学位の種類 博士 (農学) 学位記番号 連研 第315号
学位授与年月日 平成17年3月23日 学位授与の要件 学位規則第4条第1項該当 課程博士
研究科及び専攻 連合農学研究科 生物資源科学専攻
学位論文題目 韓国産のアワタンパク質の脂質代謝及びインスリン、アディポネクチン分泌に及ぼす影響
(Effects of dietary protein of Korean foxtail millet on lipid metabolism and secretions of insulin and adiponectin)
論文の内容の要旨

 韓国では、雑穀のアワが、日本以上に消費され食されているにもかかわらず、その健康機能に ついては、研究が全く行われていない。

 本研究は以下のように、韓国産のアワの健康機能を明らかにすることを目的として、韓国のアワタンパク質摂取による 糖質及び脂質代謝、アディポサイトカイン分泌に及ぼす影響を検討し、次のような新規な研究結果を明らかにした。

1)韓国アワの精白粒の主要成分は、炭水化物であり66.8%、次にタンパク質が12.2%、食物繊維3%、及び脂質が 4.5%含まれていた。アワタンパク質のポリペプチド組成は6、22-23、27kDaから構成される主要なポリペプチドから 構成されており主成分はこのうち22-23kDaの部分であった。アミノ酸分析の結果、リジンが第1制限アミノ酸で、 そのアミノ酸スコアは33であった。このリジンの含有量は、韓国のアワが、日本のアワのおよそ2倍もリジンが 多いことを明らかにした。

2)C57BL/6マウスを用いて、高コレステロール食餌を与えて高コレステロール血症を誘導させたときの アワタンパク質の脂質代謝に及ぼす影響について調べた。その結果、アワタンパク質摂取群はカゼイン摂取群に比べて、 血漿と肝臓のトリグリセリド濃度を有意に低下させることが明らかになった。

3)C57BL/6マウスを用いて、高脂肪・高ショ糖食餌をマウスに与えて肥満を誘導させた時のアワタンパク質摂取による 糖質及び脂質代謝改善に及ぼす影響について検討した。その結果、アワタンパク質摂取群はカゼイン摂取群に比べて、 血漿のトリグリセリド濃度や血糖値を低下させ、体重や脂肪組織の重量を減少させる抗肥満、血糖値を下げる機能を 有することが明らかになった。

4)肥満型遺伝性2型糖尿病モデルKK-Ayマウスに、正常食餌及び西欧型の食餌モデルの高脂肪・高ショ糖食餌を 与えたときのアワタンパク質摂取による糖質及び脂質代謝、アディポサイトカイン分泌に及ぼす影響を検討した。 その結果は、アワタンパク質摂取群はカゼイン摂取群に比べて、インスリン分泌を大きく抑制し、HDL-コレステロール 及びアディポネクチン濃度を著しく上げる機能が明らかになった。

 食餌性タンパク質が、インスリン分泌、HDL-コレステロール濃度及びアディポネクチン濃度の三者を同時に 改善する機能を明らかにした結果は、本論が初めてである。

 以上の本論文の結果から、HDL-コレステロール、アディポネクチン及びインスリンの動脈硬化及び肥満抑制機能 さらには2型糖尿病改善機能を考慮すると、韓国産のアワタンパク質は、肥満の抑制及び糖尿病の進展を遅延させる 機能のあるタンパク質であると、結論した。

 本論文で示した韓国産のアワタンパク質は、機能性食品素材として、さまざまな食品への活用が期待される。