氏 名 CHEN Jun
陳  軍
本籍(国籍) 中国
学位の種類 博士 (農学) 学位記番号 連研 第311号
学位授与年月日 平成17年3月23日 学位授与の要件 学位規則第4条第1項該当 課程博士
研究科及び専攻 連合農学研究科 生物資源科学専攻
学位論文題目 最適制御理論を用いた農用車両の追従制御
(Path Tracking Control of Farm Mobile Vehicle Using Optimal Control)
論文の内容の要旨

 農業は産業の根幹をなす重要な産業の一つであるが、現在の日本の農業を取り巻く状況として 農業従事者の減少・高齢化が挙げられ、労働力不足が深刻な状況にあり、農作業の効率化は急務となっている。 この日本農業が抱えている労働力不足は、欧米も切迫した状況にあり、国際的にも農業機械の自動化システムは 高いニーズがある。アメリカの1戸あたりの平均耕作面積は200haを超え、家族経営が主流である。 例えば、天候不順で作業適切な時期が短い年は、昼夜を問わず作業を行なう。当然、疲労による農作業事故が後を たたない。このような背景から、米国でも農業機械の自動化技術に対する期待はかなり高い。実際に米国の 大手農業機械メーカーはすべてこの種の自律走行システム開発に力を入れている。日本でも農業機械の自動化技術に 関する研究が盛んである。

 本研究は、農用車両の運動計画に関して、対象車両をトラクタ単体とトラクタ・2輪トレーラ系の2つを選び、 最適制御理論を用いて、それぞれの移動ロボット自律走行について検討した。

 1.最適制御理論による非ホロノミックシステムの解析と制御
 非線形系に拡張した2自由度設計手法を用いて、非ホロノミックシステムの制御問題を検討した。 ①適制御理論を用いてフィードフォワード制御において、基準軌道を生成することを検討した。 ②制御理論により生成した軌道へ追従する最適レギュレータを設計した。これは外乱及びモデル化誤差などに対して 生成したフィードバック制御器で対処するという手法である。

 2.トラクタ単体の自律走行の設計とその実現
 1)直線路への追従制御 この場合は、軌道設計は不要である。従って、直接、フィードバック制御器を設計した。 アスファルト路面と7°の傾きの牧草地で直進前進と後退の実車実験をそれぞれ行なった。
 2)車線変更(y,θ,α)を状態量とし、初期状態(0,0,0)から終端状態(H,0,0)へ至る基準軌道を生成し、 生成した基準軌道へ追従走行する最適制御器を設計した。また、設計した制御器を用いてアスファルト路面で 前進走行と後退走行の車線変更の実車実験をそれぞれ行なった。
 3)作業機の自動装着のための誘導制御 誘導時の軌道生成を曲線とそれに滑らかに接続する直線路との組合せで 作成し、生成された基準軌道に関して、移動ロボットをオントラッキングさせる実車実験を行った。
 4)任意な曲線に沿う実車実験 与えたf(x,y)=0から未知のθとαを直接推定し、追従走行のコントローラを 生成した。牧草地で、代表経路として1つの正弦波経路と3つの円経路を設定し、それらの曲線路に追従する自律走行実験を行った。

 以上のすべての実験で、圃場や牧草地などで単体移動ロボットの追従制御が実用的な精度を実現できることを 示した。

 3.連結車両の自律走行の設計とその実現
 トラクタにトレーラを接続した連結車両の自律走行について検討した。この系は、後退運動時に不安定な系となる。 ここでの目的は、この不安定な制御対象をフィードバックによって安定化させることである。
 1)直線路への制御 操舵角を操作量とし、操舵角角速度を操作量として二種類の制御器を設計し、アスファルト路面と 非舗装路面でそれぞれ実車実験を行った。
 2)曲線経路への追従制御 円経路と正弦波経路の二種類基準軌道を設定し、追従制御器を設計し、牧草地で 実車実験を行った。
 3)連結車両の車庫入れ制御 任意の初期状態から最終ゴールである原点までの基準軌道を求めた。 次に、追従制御コントローラを設計し、シミュレーションで設計したコントローラの有効性を検証した。 最後、アスファルト路面で実車実験を行なった。

 以上のすべての実験で、連結車両型移動ロボットの追従制御理論を検証した。