氏 名 WEI HUA
魏  華
本籍(国籍) 中国
学位の種類 博士 (工学) 学位記番号 工博 第99号
学位授与年月日 平成17年3月23日 学位授与の要件 学位規則第5条第1項該当 課程博士
研究科及び専攻 工学研究科 生産開発工学専攻
学位論文題目 鉄筋コンクリート充填鋼管構造の力学特性に関する研究
論文の内容の要旨

 近年、土木・建築の分野で、コンクリート充填鋼管(Concrete Filled Steel Tube、 以下CFTと呼ぶ)構造は広範囲に用いられるようになっている。CFT構造は、合成構造の一種で、 鋼とコンクリートの異種材料を部材レベルあるいは構造システムレベルで結合し、それらが一体化して機能する構造である。 初めての応用例は1879年英国Severn鉄道橋に採用されたCFT橋脚である。CFT構造に関する既往の研究は盛んであり、 今まで多数の論文が発表されている。それらの研究によると、CFT構造は、鋼管と充填コンクリートの複合効果によって、 耐力、靭性および剛性が大幅に改善できることが明らかにされている。また、CFT構造の施工では、 コンクリート型枠が不必要であることから、狭い現場での建て込みが容易にでき、省力化、工期短縮など優れた施工性も有している。

 一方、平成7年1月に発生した直下型地震である阪神・淡路大震災では、多くの鉄筋コンクリート橋脚や柱、 鋼製橋脚などが大きな被害を受け、その多くがコンクリートのせん断破壊と鋼管の局部座屈によるものであった。 このため、震災後、鉄筋コンクリート橋脚・柱の側面を鋼板で巻き、注入材で固めた一種の鉄筋コンクリート充填鋼板構造とする 耐震補強が実施された。また、既設の鋼製橋脚に対して鉄筋コンクリート(RC)を充填する耐震補強も行われた。 これらの補強構造物は、見方を変えると一種の鉄筋コンクリート充填鋼管(RCFT)構造と見なすことが可能である。

 また、近年大型構造物や長大構造物など土木・建築構造物が大規模化していく中で、優れた力学特性を有する 構造物を建設するには従来の鋼構造、RC構造だけでは実現が難しくなっている。そのような状況のもとで、 大規模土木構造物に対応できる強度、靭性、鋼性及び耐震性能に優れた構造要素の開発が求められている。

 本論文では、前述したような力学特性を有する構造要素の開発を目指して、RCを鋼管に充填させた鉄筋コンクリート 充填鋼管(RCFT)構造という新構造を検討の対象とした。RCFT構造について、柱や梁部材として合理的な設計を するための基礎資料を得るのが、本研究の目的である。

 そこで、充填コンクリートの強度、鋼管のリブの有無と径厚比、及び鉄筋の配置がRCFT構造の耐力、 変形性能などの力学特性に与える影響を明らかにするため、円形鋼管を用いる場合は圧縮試験・純曲げ試験・ 曲げせん断試験を、角形鋼管を用いる場合は圧縮試験・純曲げ試験を実施し、円形鋼管と角形鋼管を用いた RCFT柱の試験結果を耐力及び変形性能の両面から比較検討した。そして円形鋼管を用いたRCFT構造の 耐力評価に関する評価式を提案し、試験結果及び建築指針による結果と比較することで検証を行った。 得られた結論は下記のようになる。

(1)CFT柱の充填コンクリートに鉄筋を挿入することによって、充填コンクリートのせん断破壊が発生しないことが 分かった。また、リブを有する円形鋼管柱を使用すると鋼とコンクリートの一体化がさらに促進され、終局時まで 両者が一体となって挙勤し、充填コンクリートのひび割れを分散させる効果もあった。

(2)鋼管とコンクリートのひずみ比−荷重比の関係から、CFT柱と比較して、RCFT柱は荷重初期段階から 一体化の挙動をしていることが分かった。

(3)RCFT試験体はCFT試験体に比較して、強度、剛性及び靭性が改善され、特に荷重−変位曲線(圧縮試験)、 モーメント−曲率曲線(純曲げ試験)のそれぞれのピーク後の靭性が大幅に向上した。

(4)純曲げ試験におけるCFT梁試験体では、載荷点でひび割れ破壊が生じたが、RCFT梁試験体では、 ひび割れ破壊は生じなかった。従って、RCFT梁試験体では、配筋による初期ひび割れを遅らせる効果により、 ひび割れ破壊を防ぎ、高い曲げ強度と靭性が期待できる。

(5)円形柱の場合は、コンファインド効果による耐力上昇が顕著であるが、角形柱の場合はコンファインド効果の 影響も少なく、局部座屈による耐力低下が見られた。また円形柱の変形性能も角形柱より格段優れていることが明らかになった。

(6)RC充填鋼管柱における鋼管とコンクリートの複合効果は、鋼管により横拘束された充填コンクリートの 一軸圧縮強度の増大によって生じたと考えられる。また、RC充填鋼管梁における鋼管とコンクリートの複合効果は、 拘束された充填コンクリートの一軸圧縮強度が増大することと、鋼管の引張応力を受ける側が二軸引張応力状態に なることによって強度が増加することにより生じたと考えられる。

(7)本研究の結果に基づき、円形鋼管を用いたRCFT柱の軸圧縮耐力とRCFT梁の曲げ耐力評価式を提案し、 既往の計算式や試験結果と比較した結果、本提案式が軸圧縮及び曲げの耐力の評価をより正確に表現していることが分かった。