氏 名 | 韓 圭鎬 |
本籍(国籍) | 韓国 |
学位の種類 | 博士 (農学) | 学位記番号 | 連研 第293号 |
学位授与年月日 | 平成16年3月23日 | 学位授与の要件 | 学位規則第4条第1項該当 課程博士 |
研究科及び専攻 | 連合農学研究科 生物環境科学専攻 | ||
学位論文題目 | Biological functions of some beans with special reference to lipid metabolism and antioxidation (十勝産雑豆の脂質代謝及び抗酸化に対する生理学的機能) |
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論文の内容の要旨 | |||
生活習慣病のうち高血圧、高脂血症、糖尿病、肥満は死の四重奏とも呼ばれている。 それが原因で起こる心臓病は先進国では最も関心をもっている疾患である。生活習慣病の予防として日々の食生活において 各栄養素をバランスよく摂敢し、特に動脈硬化を防ぐために脂質を過剰摂取しないことが肝要である。 豆はその中に含まれている食物繊維、澱粉、ポリフェノールなどの成分が生理機能として有用であることが認められている。 特に、食物繊維やレジスタントスターチは血液中のコレステロール低下機能があると報告している。 本論文はアズキ、キントキ及びテボウから作られた餡がレジスタントスターチの性質を示していることからその澱粉の 脂質代謝に及ぼすメカニズムの究明、さらに餡の生産過程中副産物である豆皮部分の繊維や色素画分の脂質代謝或いは 抗酸化に対する生理学的機能を検討した。 第1章には、アズキ(AF)、キントキ(KF)及びテボウ(TF)の皮からの食物繊維5%を含む食餌をラットに4週間 経口投与したときの血清コレステロール濃度に及ぼす影響について検討した。 対照群には5%セルロース食(CP)を投与した。血清コレステロール(CHOL)及び糞便中への胆汁酸の排泄は AF群、KF群及びTF群はCP群との有意差が見られなかった。食物繊維中の不溶性繊維より水溶性繊維の方が血液内CHOL低下機能があるが、 本研究ではおそらく餡の生産過程中で熱水処理時豆の皮からの水溶性繊維の損失したことに起因して血液CHOL低下効果が なかったと考えられる。 第2章においては、アズキ(AS)、キントキ(KS)及びテボウ(TS)の餡を製造する過程で生成されるレジスタントスターチ 25%を含む食餌をラットに4週間経口投与したときの血清コレステロール濃度に及ぼす影響について検討した。 対照群にはコーン澱粉(CS)を用いた血清総CHOL、VLDL+IDL+LDL+CHOL及び中性脂肪濃度はAS群、KS群及びTS群で CS群より投与期間を通して有意に低下していた。盲腸中のpHはCS群でAS群、KS群及びTS群より有意に増加していた。 さらに、盲腸中の酪酸濃度は各豆澱粉投与群でCS群より有意に増加しており、総短鎖脂肪酸濃度でもAS群及びTS群で CS群より有意に増加していた。糞便中への中性コレステロール排泄量はAS群、KS群及びTS群でCS群より有意に増加していた。 以上の結果よりAS、KS及びTSの血清CHOL低下作用は各豆澱粉が盲腸内で発酵してそれに伴い増加した短鎖脂肪酸、 特に酪酸が中性ステロール排泄量を増加させたことに起因している。 第3章においては、CHOL食餌により小豆レジスタントスターチ投与がラットの脂質代謝に及ぼす影響について 比較・検討している。15%コーンスターチ食を投与した基本食餌群(BD)とさらにBDに0.5%のコレステロールをそれぞれ 添加したCHOL食餌群(CD)とアズキから調製した製造する過程で生じた澱粉を15%添加したアズキ-CHOL食餌群(ACD)に分け、 8週齢のF344系雄ラットに4週間経口投与した。小豆澱粉の投与によりACD群の血清総CHOL及びVLDL+IDL+LDL+CHOL濃度は CD群より有意に減少した。これらの結果より、CHOL添加によるアズキレジスタントスターチの血清コレステロール低下作用には、 HMG-CoA還元酵素活性の低下によるCHOLの合成抑制とCholesterol7α-hydroxylase活性の増加による糞便中への胆汁酸の 排泄促進が大きく起因している。 第4章では、試験管内でペプシン・パンクレアチン消化後得られた餡粒子未消化物をラットに投与したときの 脂質代謝に及ぼす影響について比較・検討した。アズキ、キントキ、テボウから調製した餡を37℃の生理的条件下で ペプシン・パンクレアチン消化を行って未消化物を調製し、それを5%添加した食餌を8週齢のF344系雄ラットに4週間経口投与 した。対照群には5%セルロース食を投与した。血清総CHOL、VLDL+IDL+LDL-CHOL及びHDL-CHOL濃度は、雑豆未消化物の 投与により、投与期間を通して対照群に比べ有意に減少していた。また、肝臓CHOL濃度や糞便中への胆汁酸排泄量は 雑豆餡未消化物投与群で有意に増加していた。肝臓中のmRNAレベルではLDL receptor、Cholesterol7α-hydroxylase、 SR-B1が、3種の雑豆餡未消化物投与群で増加傾向を示した。これらの結果より、雑豆餡未消化物の血清コレステロール 低下作用は、LDL-receptor及びSR-B1の増加による肝臓へのLDL及びHDLの取り込みの増加及びCholesterol7α-hydroxylase活性の 上昇による糞便中への胆汁酸類の排泄促進等に起因する。 最後に第5章においては、アセトアミノフェン(APAP)をラットに投与したときの肝毒性に対してアズキ水溶性画分の
抑制する影響を比較・検討した。アセトアミノフェン0.3%とアズキ水溶性画分5%を添加した食餌を8週齢のF344系雄ラットに
4週間同時に経口投与した。ARAPを投与していない対照群には5%セルロース食を投与した。血清総CHOL濃度と
HDL-CHOL濃度はARAP投与群が投与期間を通して対照群とアズキ投与群より有意に減少していた。
ARAP投与群の血清VLDL+IDL+LDL-CHOL濃度は対照群より有意に低下した。一方、アズキ投与群の血清VLDL+IDL+LDL-CHOL濃度は、
両群と有意さは見られなかったが、ARAP投与群より増加傾向が見られた。4週目の血清GOT濃度はARAP投与群が
対照群より有意に増加し、アズキ水溶性画分の投与によってこの上昇は抑制された。肝臓のリン脂質過酸化物である
PCOOH濃度はARAP投与処理群で対照群より有意に増加した。肝臓のグルタチオン濃度(GSH)はARAP投与により対照群と
アズキ投与群より有意に減少した。 以上の結果を総括すると、雑豆類の皮部分の食物繊維はラットの血清コレステロールの低下効果は見られなかったが、 その餡を製造する過程で生じる澱粉にはレジスタントスターチの性質を示し、ラットの血清コレステロールを 有意に低下することとさらに、小豆水溶性画分は抗酸化機能を持っていることから今回用いたアズキ、キントキ、テボウは 生活習慣病に対してその予防効果があると考えられる。 |