氏 名 | 若佐 雄也 | 本籍(国籍) | 北海道 |
学位の種類 | 博士 (農学) | 学位記番号 | 連研 第272号 |
学位授与年月日 | 平成16年3月23日 | 学位授与の要件 | 学位規則第4条第1項該当 課程博士 |
研究科及び専攻 | 連合農学研究科 生物資源科学専攻 | ||
学位論文題目 | リンゴ果実形質のDNAマーカーに関する研究 (Studies on the DNA markers linked to fruit trait in apple) |
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論文の内容の要旨 | |||
幼若期が約10年と長い果樹においては、実生段階での果実形質予知が可能となるDNAマーカーの 選抜効率は極めて高いことから、果実形質に関わるDNAマーカーの作出が望まれているが、現在までリンゴでの 果実形質連鎖マーカーの報告は果皮色(Cheng et al. 1996),完熟果実のエチレン生成量(Sunako et al. 1999, Harada et al. 2000)、酸度(Conner et al.1997)、後期落果性(Sato et al. 2004)の4種のみである。 本研究では、果皮色のDNAマーカーに見出されたMajinの解析と、また、‘ふじ’の高日持ち性DNAマーカーの 設定を目的として、リンゴの完熟に関連する新規遺伝子のクローニング、およびそれらの発現解析を行い‘ふじ’の 日持ち特性との関係について検討した。 果皮赤色化遺伝子Rf連鎖マーカーA1と黄色化遺伝子rf連鎖マーカー a1またはa2は共優性マーカーの 関係にある。すなわち、PCRによりA1が増幅される場合の果皮は赤色に、a1またはa2のみ、もしくは両者が 増幅される品種の果皮は黄色か緑色になる。rf a2の原因となる挿入配列として見出されたMajinは153bpと サイズが小さく、標的配列は10bp、内部にはStem and Loop構造を形成する逆位反復配列があり、かつATに富んでいた。 特徴としてはイネゲノムで報告されたトランスポゾン、Snap, Crackle, Pop (Song et al.1998)に類似していた。 また、バラ科の亜科、Maloideaeのゲノム内に約6000コピー存在していた。 Majin の高密度散在性を利用したITAPは、優れた分析能を示したことから、今後のMaloideaeゲノム解析への 応用が期待された 完熟果実、離層形成時の果柄組織、培養シュートから得られた6種類のエクスパンシン遺伝子 MdExp の特徴づけを行ったところ、MdExp3 が完熟進行とパラレルな発現が認められ、その発現はエチレンシグナル系 アンタゴニストの1-メチルシクロプロペン(MCP)処理により抑制可能であったことから、これが完熟型であることが 明らかとなった。また、 MdExp1,MdExp2,MdExp4,MdExp5 は果実成長や、他の器官での機能を有すると考えられた。 一方、MdExp6 は傷害誘導型で、細胞修復過程に関与するエクスパンシン遺伝子であると推察された。 MdACS1型(Sunako et al. 1999, Harada et al. 2000)の異なる品種・系統およびMCP処理を施した 果実の完熟進行時の関連遺伝子、MdACS1, MdACS3, MdACO1, MdPG1, MdGal1, MdExp3 の発現解析を通して、 MdACS3発現から始まる少量のエチレンが他の完熟関連遺伝子の発現を開始させる、すなわち、完熟開始(System1)の 引き金となるが、その発現は多量のエチレンによってネガティブな調節を受けること、MdACS1, MdACO1, MdPG1, MdGal1, MdExp3 の発現に必要なエチレン量の閾値は数nl/lと低レベルであることが明らかとなった。 ‘ふじ’後代品種の果実軟化と上記の完熟関連遺伝子発現との関係を調査したところ、完熟進行中に軟化が 認められる品種ではMdPG1の発現があったのに対し、軟化がほとんど認められない品種での完熟時 MdPG1低発現の原因を調査するため、‘ゴールデンデリシャス’と‘ふじ’のMdPG1の5'隣接領域 2342bpの塩基配列を比較したところ、20ヵ所のSNPsが見出された。しかし、そのSNPsの1つを用いたPCR-RFLPは 果実軟化の有無と関連性を示さなかった。このことから、MdPG1低発現の原因は転写因子などのトランスに あることが予想された。 |