氏 名 CHAE, Yong Woo
蔡 鎔宇
本籍(国籍) 韓国
学位の種類 博士 (農学) 学位記番号 連研 第265号
学位授与年月日 平成16年3月23日 学位授与の要件 学位規則第4条第1項該当 課程博士
研究科及び専攻 連合農学研究科 生物生産科学専攻
学位論文題目 牛乳消費者におけるリスク回避と自己負担に関する経済分析
(Economic Analysis on Self-Pays for Risk Avoidance of Milk Consumers)
論文の内容の要旨

 本論文は、牛乳消費者が食品の安全と環境に関わる特定リスク及び複合リスクの回避に対して どんな自己負担を選好しているのか、貨幣価値によって明らかにすることを目的にしている。 ここで特定リスクの回避の1番目は、牛乳消費者本人が食中毒による直接的かつ短期間にわたる健康被害のリスク (リスクP)から免れることであり、また2番目は、環境汚染の広がりによって、牛乳消費者本人だけではなく 次世代にも予想される間接的かつ長期的にわたるリスク(リスクN)から免れることである。複合リスクの回避とは、 上の二つの特定リスクから同時に免れること(リスクPN)を指す。

 上記の研究目的を達成するために、本論文において次の三つの研究課題が設定された。

 第1の課題は、リスクPの回避に関連して乳業メーカーの仮想的な安全性確保に対する消費者の支払意志額 ((WTP:Willingness To Pay,以下、WTP(安全))を計測し、同時にその影響要因を明らかにすることである。

 第2の課題は、リスクNの回避に関連して家畜排せつ物の仮想的な環境保全に対する消費者の支払意志額 (WTP(環境))を計測し、同時にその影響要因を明らかにすることである。

 第3の課題は、リスクPNの回避に関連して、複合リスクの回避に対する消費者の支払意志額(WTP(安全・環境))を 計測し、WTP(安全)およびWTP(環境)と比較を試みることである。

 以下、主な章ごとの分析結果を示す。

 第3章「特定リスクの回避に係る自己負担分析-食品の安全性を対象として-」において、WTP(安全)および、 追加的なWTP(安全)を意味するAWTP(安全プレミア)を計測した。成分無調整牛乳の場合、WTP(安全)は 平均215.2円、AWTP(安全プレミア)は最小評価額6.0円、最大評価額28.9円であった。AWTP(安全プレミア)への 影響要因としては、HACCPマークの確認、食中毒の経験、所得の三つが有意であった。

 第4章「特定リスクの回避に係る自己負担分析-環境保全を対象として-」において、WTP(環境)および、 追加的なWTP(環境)を意味するAWTP(環境プレミア)を計測した。成分無調整牛乳の場合、WTP(環境)は 平均222.6円、AWTP(環境プレミア)は最小評価額11.5円、最大評価額は37.7円であった。AWTP(環境プレミア)への 影響要因としては、12歳以下の子供が日常飲用者の中にいる場合、本人の牛乳購入本数、エコマークの認知度、 環境運動への参加経験、紙パックの資源回収、所得の六つが有意であった。

 第5章「消費者個人のリスク回避に係る選好構造」では、まずWTP(安全・環境)を計測し、次にAWTP (安全・環境プレミア)をAWTP(安全プレミア)およびAWTP(環境プレミア)と比較した。WTP(安全・環境)の 平均は226.5円、その範囲は216.3円~235.0円であった。また、AWTP(安全・環境プレミア)の最小評価額16.8円、 最大評価額42.3円であった。比較においては、「AWTP(安全プレミア)+AWTP(環境プレミア)>AWTP(安全・ 環境プレミア)」の選好構造を示したのが88.8%も占めた。なお、AWTP(安全・環境プレミア)への影響要因としては、 12歳以下の子供が日常飲用者の中にいる場合、本人の牛乳購入本数、エコマークの認知度、環境運動への参加経験、 紙パックの資源回収、所得の六つが有意であった。