氏 名 ZHAO, Hua
趙  華
本籍(国籍) 中国
学位の種類 博士 (農学) 学位記番号 連研 第262号
学位授与年月日 平成16年3月23日 学位授与の要件 学位規則第4条第1項該当 課程博士
研究科及び専攻 連合農学研究科 生物生産科学専攻
学位論文題目 中国のWTO加盟と貿易管理システムの再編成に関する研究
(A Research on the China's WTO Accession And the Reorganization of Trade Management System)
論文の内容の要旨

 中国は1980年代以降の改革開放政策を通じて、市場経済体制を確立させるための国際ルールの 導入を開始した。それにより中国の世界市場との連係は、ますます緊密となり、2001年にはWTO加盟を果たすに至った。 この研究は、WTO加盟前後における中国貿易管理システムの再編成に関して、制度的変革の過程と影響をマクロ的に 考察することに加えて、中国内の経済的後進地域である西部内陸部の西安市に本拠を置く国有貿易企業の組織的、 経営的対応を具体的、実証的に考察することを通じて、今後の貿易管理システムの方向とそれが抱える問題点を 明らかにすることを課題としている。

 この課題に対する本論文の考察の結果は、中国のWTO加盟と貿易管理システムの再編成に対して、次の各点を 明らかにした。

 第一は、これまでの貿易管理体制改革の流れは、漸進的な経済体制改革と歩調をあわせて、段階的に進められた ことに特徴がある。具体的には、GATT交渉の進展にあわせて、国家管理型の貿易管理体制を全面廃止したのち、 貿易許可証管理制度へ移行し、続いて、WTO加盟交渉の進展とともない、貿易に対する政府の管理手段も多様化を通じて 最後的に、「WTO体制への移行」が貿易管理体制改革の方向指針となった。

 第二は、WTO加盟までの貿易の許可証管理制度は、中央政府が許可証の申請・交付体制を通じて、対象品目の貿易を コントロールすることである。その際、中央政府、中央政府の地方出先機構及び地方政府という3段階の許可証申請・交付の 行政体系によって、品目ごとの重要性に応じて、許可証の段階的管理がなされた。一方、このような貿易の管理システムの下で、 新たに貿易上の東西部地域間格差の拡大問題に加えて、経営上の改革が要求されることになった。

 第三は、中国のWTO加盟交渉の過程と重要な市場アクセス合意の概要及びそれにより農産物貿易への影響を 本論文の第四章で検討を行った。その結果、市場アクセス合意によって、中国は、国内市場管理を緩和し、重要 農産物の輸入に対し、関税化か関税割当制度に移行しなければならない。この結果、品目別に見ると、野菜ではプラス、 ダイズではマイナス、小麦では政策への圧力などの多様な影響をもたらすことが予測された。

 第四は、WTO加盟一年において、中国は、さらなる貿易の自由化措置に踏み切った。すなわち、関税の引き下げ、 貿易経営権の規制緩和や許可証など非関税障壁の削減などである。 この結果、輸入の増加など貿易がさらに増大する一方で、品目変動や地域間格差の拡大などの問題が大きくなる傾向も現れた。 一方、国有貿易商社は、持続的な組織再編を通じて、人件費削減や内部管理効率の向上を図るほか、 「ヒト・モノ・カネ」などあらゆる社内経営資源を比較優位のある品目の輸出業務並びに輸入農産物貿易など成長性の 大きいプロジェクトに集中させ、収益重視を自社経営上の最重要指針とすることなった。

上記要約の各点に踏まえて、これからの中国の貿易管理システムを考えると、これからの中国政府の貿易管理機構の 主な役割は、これまでの行政による直接的の「管理と介入」から「WTO自由貿易体制の整備」や「行政サービスの提供」、 つまり、過去の極度に「大きな政府」から限定的な「小さな政府」に転換していく。しかし、東西地域間格差の 拡大などの問題がさらに深刻となる可能性も高く、それにおいて、国有貿易商社が収益重視を最大の経営目標として いくだけではなく、貿易管理システムの一環として、貿易や産業の発展上において、政策的な役割を果たすことも期待される。