氏 名 古谷 一幸 本籍(国籍) 秋田県
学位の種類 博士 (工学) 学位記番号 工博 第89号
学位授与年月日 平成16年3月23日 学位授与の要件 学位規則第4条第1項該当 課程博士
研究科及び専攻 工学研究科 生産開発工学専攻
学位論文題目 HIP法を用いたF82H鋼製核融合炉第一壁のモデル製作およびその冶金的・機械的特性に関する研究
論文の内容の要旨

 核融合炉は新基盤エネルギー源開発の中核的存在である。核融合炉ブランケット第一壁に 要求される機能性を満たすため、マルテンサイト鋼(F82H鋼)が開発され、それを用いたテストブランケットの 製作手法の確立のために、第一壁の部分実規模構造体(第一壁モデル)を製作する必要がある。 そこで本論文ではF82H鋼を用いた矩形管の製作、HIP法を用いた矩形管の接合による第一壁モデルの製作、接合部の 引張り試験と衝撃試験による健全性評価、靭性改善法の提案と実証、照射損傷の評価を検討している。

 論文は7章から構成され、第1章は緒言である。第2章ではF82H矩形冷却管の製造について述べている。 引抜き法とロール成形の2種類の方法を試み、形状誤差、表面粗さなどを計測し、いずれの矩形管も有害な傷や割れがなく 寸法精度も良好であるが、引き抜き法がより好都合であることを示した。

 第3章では第一壁モデルの製作について述べている。工程設計を行い、製造した矩形管を用いてHIP接合法による モデルの製作を行い、HIP接合法により製作が可能であることを実証した。

 第4章では製作したモデルの接合部の非照射健全性について述べている。モデルの母材部や直線接合部の結晶の 微細組織・接合状態は良好であったが、板と矩形管と矩形管より成る接合部(複合接合部)を中心に粒径が 約300μmに粗大化していた。また、直線状の接合境界が明瞭に観察された。引張り試験とシャルピー衝撃試験を実施し、 引張り試験による複合接合部の引張り強度、降伏応力および伸びなどの延性特性(室温〜773K)は母材部と同等であるが、 衝撃特性(173K〜室温)の劣化が認められ、特に吸収エネルギーが室温で40%と大幅に低下していた。 室温での衝撃試験片の破面観察の結果、靭性低下の要因は(1)脆性破壊と(2)ディンプルの成長不足と同定した。

 第5章では靭性の改善について、表面粗さ、表面の清浄度、接合面の初期ギャップの影響をそれぞれ検討した。 その結果、靭性低下要因の主因子は、(1)表面に残留した異物、(2)境界に沿って析出した炭化物、(3)粗い接合表面、 (4)初期ギャップによる拡散不足と同定した。なお、結晶粒粗大化は靭性を低下させることが知られているため、 粗大化も寄与していると考えられる。靭性を改善するため、複合接合部模擬材に対し、(1)接合表面を鏡面仕上げし、 (2)1hの超音波洗浄を施しHIP接合した後、(3)結晶粒の細粒化と介在物粒子の拡散を目的にした3段階の後熱処理を 実施した結果、室温において破面全体が延性破面となり、吸収エネルギーが十分に改善されることを実証した。

 第6章ではHIP接合部と母材部の照射後引張り特性について述べた。520K程度にて1.5dpa程度までの中性子照射の 後に引張り試験を行った結果、HIP接合部での破断は生じなかった。これより接合部の強度は照射後も母材部と同等で あることを明らかにした。またモデルの製作履歴が素材に与える影響は照射後も少ないことを明らかにした。

 第7章は結論であり、各章の結論を総括し、その工学的意義を述べている。