氏 名 かねなが ひろき
兼永 洋希
本籍(国籍) 広島県
学位の種類 博士 (工学) 学位記番号 工博 第84号
学位授与年月日 平成16年3月23日 学位授与の要件 学位規則第4条第1項該当 課程博士
研究科及び専攻 工学研究科 物質工学専攻
学位論文題目 回分晶析におけるグリチルリチン酸モノアンモニウムの晶析条件と結晶形状、純度および凝集に関する研究
論文の内容の要旨

 本論文は、世界的に大量に利用されている機能性天然植物「甘草」の有効成分の1つである グリチルリチン酸モノアンモニウム(MG)を対象物質とし、工業生産における晶析操作方法に有用な基礎的結果を提出したものである。

 甘草を抽出処理して得られる甘草粗抽出物は、コストや生産性の関係で、現在では、MG純度50wt%程度にまでしか精製されず、 それ以上の純度を求めるためには晶析に頼らざるを得ないのが現状である。しかし、産業界には、生産され広く流通しているにもかかわらず、 析出限界濃度や結晶形状などの基礎データすらほとんど報告はない。それゆえ、高品質の製造レベルを確立するために甘草粗抽出物からの MGの結晶化現象の解明が要求されているのが現状である。そこで工業生産での晶析操作方法の指針となる基礎的結果を提出したものである。

 その結晶化現象を解明する第1段階として得られた析出限界濃度を基に、析出する結晶形状に着目し、甘草粗抽出物のMG純度と 結晶形状の関係、また、過飽和度(ΔT)と結晶形状の関係を調べた。MG純度が高いと長方形、低いと正方形の結晶形が 得られることを明らかにした。またΔTが低いと長方形であるが、ΔTを高くするにつれて長方形から、次第にその長方形の 角が小さく取れた八角形へ、さらに取れた角が大きくなり六角形に近い八角形へと形状が変化することも明らかにした。 ただし、いずれも初期に発生する結晶の形状は葉状であった。

 上述の結晶形状に影響する因子を調べた結果を基に、回分晶析で等速冷却における冷却速度が結晶形状およびMG純度に与える影響を 調べた。さらに冷却操作に種晶添加操作を加えて検討した。その結果、冷却速度を遅くするにつれて、生成する結晶の形状が六角形から 八角形、さらに長方形に近い八角形になることを明らかにした。また、初期の冷却途中に種晶を添加して結晶核を発生をさせ、その後、 発生した結晶個数を制御する目的で析出限界濃度付近にまで加温し、数を減少させながら残存した結晶をある程度の大きさに成長させ、 それから一定速度で冷却するという制御冷却回分晶析法を行った。その結果、等速冷却および種晶添加のみでは不可能であった完全な 長方形の形状が得られた。

 さらに、上述の様に提案した制御冷却を行い、得られる結晶の結晶形状、純度および凝集率を測定した。その結果、一例として、 保持温度40−50℃、初期冷却時間5−90分の範囲で、溶液温度55℃から40℃まで自然冷却にて11分で冷却する途中に種晶を添加し、 すぐに51℃まで加温して1時間温度を保持し、その後3℃の等速冷却にて結晶化する方法が、要求に応じた長方形の形状、高純度 および低凝集率の結晶が得られることを明らかにした。この結果は、他の天然有機結晶の結晶化による高純度化を行う上においても 非常に有用であると考えられる。