氏 名 松田 寛子 本籍(国籍) 福島県
学位の種類 博士 (農学) 学位記番号 連研 第233号
学位授与年月日 平成15年3月20日 学位授与の要件 学位規則第4条第1項該当 課程博士
研究科及び専攻 連合農学研究科 生物資源科学専攻
学位論文題目 ピラノース環内酸素原子を硫黄原子で置換したオリゴサッカリドアナログの合成研究
=エンド型グリコシダーゼ反応機構解明を目的としたプローブの開発=
( Synthetic Studies on Oligosaccharide Analogues, Composed of 5-Thioglucopyranoses with an Aim of Developing Probes for Endoglycosidases )
論文の内容の要旨

 酵素阻害剤の開発研究は、酵素反応機構解明はもとより、多くの生命現象の解明や医薬品への応用が大いに期待されている。 糖鎖内部のグリコシド結合を加水分解する酵素であるエンド型グリコシダーゼは、その設計が困難であるためか、 多くの研究が進められているエキソ型グリコシダーゼと比べると、その機構解明の研究はあまり詳しく行われていない。 そこで、エンド型グリコシダーゼのプローブ開発を目指して、以下の考察によりオリゴチオ糖1.1を設計し、その合成研究を展開した。

1. ピラノース環内酸素原子を硫黄原子で置換したオリゴ糖誘導体は、天然基質を最もmimicし、 エンド型グリコシダーゼ加水分解耐性アナログになると予想した。このような糖アナログ設計が、 硫黄導入による構造変化を最小化する方法であることを、分子モデリング計算を用いて検証した。 この計算結果も考え合わせ、イソマルト型オリゴチオ糖1.1をエンド型グリコシダーゼ阻害剤として設計した。

2. 新たなエステル保護基として、アジド基を有する(2-azidomethyl)benzoyl (AZMB) 基(3.6)の合成法および応用法の開発に成功した。 この保護基は、中性条件下で他のエステル保護基と区別して脱保護でき、塩基性条件下や酸性条件下において比較的安定であることも判った。 通常の糖と比較すると保護基や方法論に制限のあるオリゴチオ糖の合成に有用であると考えられる