氏 名 小田 泰行 本籍(国籍) 岩手県
学位の種類 博士 (工学) 学位記番号 工博 第81号
学位授与年月日 平成15年3月20日 学位授与の要件 学位規則第4条第1項該当 課程博士
研究科及び専攻 工学研究科 電子情報工学専攻
学位論文題目 流動的柔軟物体の粒子ベースビジュアルシミュレーション法に関する研究
論文の内容の要旨

 自然現象のビジュアルシミュレーションに関する研究が活発になってきている. ここ20年間においては,特に,樹木などの植物生長,浸食地形などの地形形成, 雲や炎などのガス状物体や流体の運動などに関する研究例が多くみられる. また最近は,計算流体力学に基づく炎・煙,水流などの流体の表現法に関する研究がとみに盛んになってきており, リアリティの高いCG映像が制作できるようになってきている.シミュレーション手法としては,有限要素法などのメッシュ法に基づくものが多い. 一方,滝のように複雑な境界面をもつ現象のビジュアルシミュレーションには,粒子群により離散化する手法が古くから用いられてきた. しかしながら,これらのモデルでは,粒子群による離散モデルと従来からの連続的な物理モデルとの関係が不明なものが多かった.

 このような中で,本論文は,粘土の変形や溶岩流というさらに複雑な振る舞いをする現象に対して, 粒子ベースのビジュアルシミュレーション法を提案するものである. 本手法は,ラグランジェ型のシミュレーション法であり,モデルの理解が直感的であるというメリットを持つ. 基本的な粒子の運動方程式で考慮している力は,流体力学の基礎方程式と同様に,外力,圧力,粘性力である. 圧力と体積保存は斥力と引力からなる粒子間相互作用力で,粘性力は離散的なラプラシアンモデルにより近似しており, それぞれの現象に対しては,以下で述べるような拡張を行っている.

 粘土のビジュアルシミュレーションのためのモデルでは,粒子間に働く斥力,引力,摩擦力などの作用力, および重力を含む外力のもとで運動する粒子群により,粘土の形状変形を実現する.粘土は,外力によって変形され, 外力を取り除いても変形したままの形で残るという可塑性の性質を持つが,本モデルでは, 斥力と引力からなる相互作用力のモデルを拡張することにより,粘土の可塑性が実現でき,(1)圧す,(2)曲げる,(3)延ばす,(4)削る, などの基本的な変形操作のシミュレーションを可能としている.

 溶岩流のビジュアルシミュレーションのためのモデルでは,粘性流体のモデルに加え,粘性力の温度との関係や, 粒子−空気間および粒子−地面間での熱移動モデルを開発することにより,溶岩流の特徴である,
  (1)流れが扇状に広がる,
  (2)温度によって粘性率が変化し冷却によって固化する,
  (3)温度によって色が変化し溶岩流表面にクラストと呼ばれる黒く固化した部分が生じる,
  (4)クラストが崩壊し明るい溶岩流が流出する,
などの現象の表現を可能としている.

 本論文においては,まずシミュレーション手法とそのシミュレーション結果からCG映像を生成するためのレンダリング手法の詳細説明を行い, 次にその手法の有効性やモデルのパラメタの意味を明らかにするシミュレーション例を示し,最後に今後に残された課題についてまとめる.