氏 名 山本 亮 本籍(国籍) 青森県
学位の種類 博士 (工学) 学位記番号 工博 第75号
学位授与年月日 平成15年3月20日 学位授与の要件 学位規則第4条第1項該当 課程博士
研究科及び専攻 工学研究科 生産開発工学専攻
学位論文題目 近代木橋の耐荷力算定法と半剛結連結部の剛性評価法に関する研究
論文の内容の要旨

 近年,木材加工技術の進歩に伴い強度・品質の安定した, かつ長期耐久性に優れた構造用大断面集成材の製作が可能となったことにより,この集成材を木橋の主材料として使用することで, 公園内の歩道橋等特殊なものに限らず,20トン級の大型車が通る林道橋にも集成材橋が積極的に採用されるようになってきた.

 しかし,我国における木橋に関する設計規準は,現在の活荷重に適合しない昭和15年内務省制定の「木道路橋設計示方書(案)」 が残っているだけで,近代木橋の設計にあたっては,日本建築学会「木質構造設計基準・同解説」や諸外国の設計法を適用している事例が多く, 我国の木橋に関する設計基準の早急な整備が望まれている.

 また,木橋を架設する際に,長大材や湾曲材は工場からの運搬が困難であるため,数部材に分割し現場で連結するということが一般的である. そのため木橋には,分割された部材をつなぐ連結部が必要となり,その連結位置や連結方法が, 構造物の静的特性や動的特性に多大な影響を与えることが考えられ,その剛性評価は非常に重要な問題となる.

 本論文では,まず,木材及び集成材梁の静的破壊試験を行うことにより,木材及び集成材の基本的な弾塑性挙動を明らかにし, それら破壊試験から得られた結果を用い,塑性域の広がりを考慮した木材及び集成材梁の弾塑性解析手法を提案し, 試験結果や他の解法と比較することにより,本手法の有効性を検証する.また,Tsai・Wuの降伏条件式を用いた弾塑性有限要素解析を行い, その降伏条件式の有効性を示すとともに,集成材の特徴であるラミナの積層構成を変化させた解析を行うことにより, 集成材梁の耐荷力に及ぼす積層構成の影響を明らかにする.

 次に,木橋を架設する際には必要不可欠な連結部を半剛結であると仮定し, その連結部を含んだ集成材梁に対して静的弾性試験を行うことにより,連結部の半剛結特性を明らかにする. また,連結部は半剛結であるということから,木橋の動的挙動にも影響を及ぼすと考え, 連結部を含んだ集成材梁及び現場での実橋連結部において打撃試験を実施し,その動的特性を明らかにする.

 最後に,打撃実験結果を用いたGA(遺伝的アルゴリズム)による,連結部の剛性評価および構造同定法を提案する. この手法を用いることにより,集成材梁の打撃実験結果からは連結部の剛性評価を,実橋連結部の打撃実験結果からは, 連結部の剛性のみならずその構造同定を行うことが可能となる.また,他の評価法と比較することにより本手法の有効性について言及する.

 従って,本論文は,木橋の設計基準整備の際に必要となる,木材及び集成材の弾塑性特性及び連結部の静的, 動的特性を明らかにするものであり,本論文で提案した解析手法は,構造工学に限らず広い応用分野があるものである.