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わたなべ かずや 渡辺 一哉 |
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京都府 |
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博士(農学) |
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連研 第212号 |
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平成 14年 3月 23日 |
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学位規則第4条第1項該当 課程博士 |
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連合農学研究科 生物環境科学専攻 | ||
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渓流における釣りの漁獲圧とその軽減に関する研究 (Study on Angling Pressure and Effect of Reduction Methods in Mountainous Stream) |
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渓流域は山間,中山間地域振興のための地域資源としての価値が高い.しかし釣りによる 対象魚類の減少は大きく,いわゆる「場荒れ」が慢性的に起こっている.これは対象とな る魚類の生産量を釣り行為による減少量が上回るためである.問題の解決のためにいろい ろと新たな取り組みもなされている.本研究ではそれらの事例分析を行い,その問題点を 把握すると共に釣りによる漁獲圧の定量的調査及びその考察から漁獲圧の軽減について論 じた. 渓流域の釣り場分類へのアプローチとして,利用状況の把握が容易と考えられたため池で の釣り場の利用実態を,1996年度に行われたアンケート結果と併せて分析した.その結果 釣り場は「居住区近接型」「中間型」「郊外型」の3つのタイプに区分することができた .この結果をもとに渓流域の釣り場について考察した.釣り場までのアプローチが車だけ では不可能で,日帰りでの利用が難しい流域を「源流域」とし,日帰りが可能な流域で砂 防ダム等で流域が寸断される場所が多い流域を「渓流域」とした.さらに経済的に価値の 高い漁業権魚種であるアユとの生息域の接触がある流域を「河川域」とすることにした. 一般的に渓流釣り場とされる「渓流域」に主眼を置くこととした.釣りによる漁獲圧を人 圧として扱うことにし,水産資源学で資源量の指標として扱われる1人当り単位時間当り の漁獲量=CPUE(Catch Per Unit Effort)で表すこととした. 「河川域」における釣り大会においては成魚放流を行っており,CPUEは最大14~15尾/h となり,一日で放流量の56%が減少していた.このため成魚放流は利用者の評価を得るた めの即時的な効果は極めて高いが,その反面魚類の減少量は極めて大きく次年度への加入 量として望むことができず,漁業法で定める増殖効果は低いと考えられた.C&R規則を用 いた「渓流域」での釣り場事例では解禁期間内での安定した釣果を得ることを目的として ,釣りによる持出を禁止し,周辺施設への利益も増加するといったメリットがあった.し かし設定区間が魚にとっての繁殖地であるかどうかの検討がなされていないため,C&Rに よる区間内の増殖効果は確認できず,CPUE維持のため毎年の成魚放流が不可欠な現状で あった.さらに当区間は車道に沿って設定されており管理面で適当であったが,多くの釣り 場が「渓流域」であることを考えるとこれらの規則の適用および管理域が限られることが 明らかとなった.よって,CPUEを人為的にコントロールする新たな手法の検討を行う際に は,「渓流域」でのCPUEの実態を河川形態とともに把握し,その特徴を明らかにする必要 がある. そこで,「渓流域」の釣り場として,山形大学付属演習林早田川を選定し,月ごとにえさ 釣りによる計12回の調査を行い,CPUEと河川形態との関係について検討を行った.調査区 間1.6kmでの河川形態毎の水面積の比率は,早瀬が全体の50%を占め,次いで平瀬・Step帯 ・瀬の順に低くなり,淵は5%を占めるのみであった.仕掛けを投入するポイントの平均密 度は平瀬が他に比べて2~3倍高く,淵が最も低い値であった.12回の調査の平均CPUEは, 水温が15度以上になる夏期には極端な低下が見られ,春と秋に高くなる傾向を示した.平 瀬ではCPUEは低く(25cm/h),淵では高く(97cm/h)なった.淵と早瀬は漁獲数・量とも に全体の約80%を占め,平均型(16~20cm)への圧力が高く,平瀬・ステップは相対的に 小型(16cm以下)への圧力が高い傾向が見られた.これらより河川形態毎にポイントの特徴 や渓流魚に対する人圧の特徴が判明し,CPUEをコントロールする際に初めに対策を講じる べき河川形態が淵であることが明らかとなった.またCPUEを軽減した自然環境要因につい て検討を行った結果,植生などが水面上に張り出すいわゆるカバーや倒流木・河床材料な どの沈床物は,仕掛けを投入する際の投入難度の上昇や投入後のアクシデントが増加する こと,遡行を妨げることなどで実際に釣りを行う時間を減少させる.その結果1日の中で 実際に釣りを行う時間が減少し,それに伴いCPUEが減少することになる.またCPUEの軽減 要因となる自然環境は魚の生息環境にとっては有用なものであり,これらの植生や地形を 利用した釣りの圧力の軽減策は渓流域についての手法として有効であると考えられた.こ れらより,最もCPUEが高く軽減要因がなくかつ最も水面積が小さい淵あるいは最も水面積 が大きく潜在的に釣りの軽減要因となる植生によるカバーが多かった早瀬での適用が効率 的であると考えられた. 以上より,渓流釣り場の環境と利用空間に応じた検討や釣りによる人圧の軽減策を講じる 際に有用な知見を得ることが出来た. |