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WANG, Ying 王 穎 |
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中国 |
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博士(農学) |
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連研 第203号 |
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平成 14年 3月 23日 |
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学位規則第4条第1項該当 課程博士 |
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連合農学研究科 生物資源科学専攻 | ||
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Sdudies on Plastid DNA Replication in Rice (Oryza sativa L.) (イネプラスチドDNAの複製に関する研究) |
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プラスチドは環状のプラスチド遺伝子をもつ細胞内小器官の総称である。 分裂組織の細胞ではプロプラスチド(原色素体)として存在するが、細胞の分化に伴い葉緑体、色素体、 白色体、アミロプラストなどに分化する。葉肉細胞での葉緑体への分化は葉の成長と相関しておこり、 また、細胞あたりの葉緑体の数や葉緑体あたりのプラスチド遺伝子の数は宿主細胞の制御下にあると 考えられている。しかし、このような葉緑体数やプラスチド遺伝子のコピー数の制御の仕組みは不明 な点が多い。特に、後者のプラスチド遺伝子コピー数の制御機構は、葉緑体数の制御に関連するにも 関わらずほとんど不明である。この問題の解明には、先ず、プラスチド遺伝子の複製のメカニズムを 知る必要がある。 このような研究の背景から、本研究ではこれまで知られていなかったイネのプラスチド遺伝子の 複製開始点を同定し、さらに複製様式を解明することを試みた。 まず、イネ培養細胞における複製開始点を同定するために、チミジンのアナログである5-ブロモ -2-デオキシウリジン(BrdU)によるパルスラベルを行い、抗BrdU抗体およびラムダエキソヌクレアーゼ を用いて、BrdUを取り込み、かつRNAプライマーをもつ短鎖複製新生鎖を得た。サザンブロット法で この新生DNA鎖をプラスチドゲノム上にマップすることにより、イネの培養細胞のプラスチドにおける 複製開始領域は2カ所の逆位反復列中に存在する2カ所の23S rRNA遺伝子の3'末端を含む約2.3kbのDNA 領域中にあることを明らかにした。この開始領域はタバコなどで報告されている複製開始領域とは異なって いた。 次に、この複製開始領域からどの様に複製が開始し、どのように複製フォークが進行するのかを 解析するために、1次元目は中性条件、2次元目はアルカリ条件で2次元アガロースゲル電気泳動を行った。 この方法で複製フォークの進行方向が解析できる。その結果、上記2カ所の複製開始領域に挟まれた小 シングルコピー領域(SSC領域)では両方向へ進行するフォークが検出され、23SrRNA遺伝子の大シングル コピー領域(LSC領域)側では23S rRNA遺伝子の転写と逆方向へ進行するフォークが検出された。 さらに、親DNAの2本鎖が両方とも鋳型として同時に複製されるのか(すなわち核遺伝子の複製と 同じ様式)、あるいは、どちらか一方の鎖のみが鋳型となっているのかを解析するために、1本鎖特異的 に働くヌクレアーゼであるMung Bean Nuclease で処理した複製中間体を、2本鎖の各々に相補的な1本鎖 RNA probe をプローブに用いてサザンブロット法により解析した。その結果、2つの親鎖が同時に複製の 鋳型となっていることを明らかにした。 以上の結果は、イネの培養細胞のプラスチドDNA複製が、これまでタバコなどで知られていたD-loop型 複製(すなわち、1本鎖のみが鋳型となり、2カ所の異なる開始点から互いに向かった複製が始まる)とは 異なることを示した。したがって、イネのプラスチドDNAの複製は、タバコとは開始点も複製様式も 異なることが判明した。 さらに、同様な方法で、イネの葉身、発芽直後の葉におけるプラスチドDNA複製開始領域および 複製様式について解析した。その結果、イネの培養細胞(プロプラスチド)、葉身(クロロプラスト)および 発芽葉(プロプラスチド)では複製開始領域が異なっていることが示唆された。 |