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Miyagi,Satoru
宮 城 聡 |
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秋田県 |
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博士(農学) |
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連研 第175号 |
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平成13年3月23日 |
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学位規則第4条第1項該当 |
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生物資源科学専攻 | ||
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動物細胞の遺伝子複製制御系と転写制御系の連絡に関する研究 (Studies on regulatory systems communicationg replication and transcription in animal cells) |
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細胞分裂の過程では染色体 DNA が正確に複製され、娘細胞に分配される。本研究は、この複製開始に関わる制御系と細胞分化における形質発現の制御系がどのように連絡しているか、という問題を解析したものである。 申請者の所属する研究室では、ラット肝細胞の特異分化形質の1つであるアルドラーゼB遺伝子(以下、AldB)の転写プロモーターが、転写が抑制されている未分化型肝癌細胞では複製開始領域 (oriA1と名づけた) として機能していることを見いだしているが、このことは、 DNA 複製開始と形質発現を包括制御する機構が細胞分化で働いていることを予想させた。 そこで、本研究では、oriA1/AldB プロモーターをターゲットとする複製制御系と肝細胞特異的な転写制御系との相互作用を解析し、増殖・分化の変換を制御する機構に関する見を得ることを目的とした。本論文では主として、 [1] 複製開始に必要な制御エレメントを決定した oriA1 領域からの複製開始には AldB プロモーター の200bp領域がが必須であることが既に判明している。そこで、複製開始に必要なエレメントの同定を、種々の塩基置換および欠失変異を導入した複製開始領域を用いて行った。その結果、3箇所の複製開始エレメント(サイト C、サイト PPu およびサイトA)を同定した。 このことから、AldB プロモーターの一部のエレメントは転写と複製開始の両者の制御に関わっていることが明らかとなった。 [2] 制御エレメントに作用する因子の性質を解析した [1] で同定された制御エレメントの1つであるサイト PPu に作用する因子 を部分精製し、その性質を解析した。この因子は200KDa 以上の分子 (PPuF-1と名づけた)であり、2本鎖および1本鎖のサイトPPuDNAに結合し、2本鎖DNAへの結合はATP 依存的であった。さらに、、PPuF の解析過程で、サイト PPu に一本鎖切を導入する活性が核抽出物中に存在することが判明したが、この因子は、PPuF とは異なる ATP 依存的な新しいタイプの endonuclease であることを明らかにした。 [3] 細胞によって複製開始領域が異なることを明らかにした oriA1 は、すべての細胞で 複製開始領域として機能するのではなく、細胞によって異なることを明らかにした。すなわち、AldB 遺伝子を発現しない細胞では、oriA1 から複製が開始するが、AldB を発現している FTO2B 細胞では 他の開始領域から開始される。従って、oriA1/AldB プロモーターでは、複製開始と転写の機能が排他的に制御されている。また、AldB 遺伝子を発現しない細胞でのoriA1 からの複製は、約22Kb 下流の領域で一時停止あるいは減速していることを明らかにした。 |