氏   名
デレオン ジョン カリラン
DELEON,JOHN CALlLAN
本籍(国籍)
フィリピン
学位の種類
博士(農学)
学位記番号
連研 第174号
学位授与年月日
平成13年3月23日
学位授与の要件
学位規則第4条第1項該当
専  攻
生物資源科学専攻
学位論文題目
Genetic and Physiological Characteristics of Heterosis in Rice(0ryza sativa L.)
(水稲の雑種強勢の遺伝的および生理的特性に関する研究)
論文の内容の要旨

 雑種強勢利用による収量増加の研究は他殖性作物であるトウモロコシにおいて勢力的に進められてきた。自殖性作物では小麦において雑種強勢利用が検討されてきた。一方、同じ自殖性作物の水稲においては、1960年代に細胞質雄性不稔系統の存在が明らかとなり、雑種強勢利用が可能となった。

 これまでイネの雑種強勢は主として、収量の向上が強調され、品質に関してアミロース含量の低下が検討されてきた。本研究では、水稲の亜種間・亜種内での雑種強勢の特性を種子形状と重量、幼植物の生長、収量構成要素および収量に関して検討した。有効茎の増加、籾数の増加とともに、籾の長、幅、厚さが増加することが収量増加に関係することを指摘した。種子の形状に関する雑種強勢は、前述のように籾の長、幅、厚さに発現し、日本型品種とインド型品種の雑種第1代種子では長、幅、厚さとも日本型品種より大きくなり、このことが雑種強勢による収量増加に関連していることを指摘した。これまで幼植物時の雑種強勢に関する研究は必ずしも多くない。本研究では、幼植物の生育に関係するパラメーターの生育段階ごとの変動を検討した。とくに、これまで指摘されることが少なかった幼植物の生長に対して抑制的に作用する細胞質効果(遺伝子)が存在すること、さらに細胞質効果は核遺伝子と交互作用し、抑制的に作用することを指摘した。初期生育に関する雑種強勢では、4×4のダイアレル交配を行い、日本型品種アキヒカリを母本とした組み合わせで初期生育が抑制されることを明らかにした。

 生長解析(Grown analysis)の理論によれば、種子重は幼植物の生長に密接に関係することが推察される。しかし、雑種イネの幼植物においては、'Initial capita1'である種子重は、本実験で用いた材料では、初期生育と関係を示さなかった。このこから粒大(重)よりも胚乳デンプンを分解し、初期生育のエネノレギー源とする生理的過程が重要であることを指摘した。

 収量構成要素と収量に関する雑種強勢に関する研究では、F1世代のみでなくF2世代の系統を含めて雑種強勢が発現することを示した。また、雑種イネの収量を検討する場合、雑種イネ育成に使用される水稲現品種は、時代とともに変遷する。したがって常に使用する親に関して一般および特定組み合わせ能力の検定が必要である。本研究では、'Inbreeding Coefficient(F)'によって一般および特定組み合わせ能力を予測する理論的、実証的研究を行った。