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ほりた ただよし
堀田 忠義 |
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岩手県 |
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博士(工学) |
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工 第3号 |
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平成12年9月29日 |
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学位規則第4条第2項該当 |
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二次元メッシュアレーの自律的再構成
(Self-Reconfiguration of 2-D Mesh Arrays) |
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原子力や気象, 分子科学, 人工知能, マルチメディアなどの分野において, 巨大計算への強い要請があり, このような問題に対して, 高速な計算機の実現が求められている. このため, 多数の処理要素(PE)からなる並列計算機の実現に関する研究が盛んに行われている. 並列計算機のアーキテクチャの1つに, メッシュ結合並列計算機がある. メッシュ結合網は単純であり, 画像処理や偏微分方程式の解法などに向いているので, 既に多数のシステムが開発されている. メッシュ結合網のこの様な特徴に注目し, 本研究はメッシュ結合並列計算機に焦点を絞る. 一方, VLSI技術の発展により, 多数のPEを用いた並列計算機を, ウェ-ハ上に集積して実現する(Wafer Scale Integration,略してWSI)ことに関心がもたれるようになってきた. 並列計算機をWSIによって実現することにより, 通信遅延減少による高速並列処理, 接続信頼性の向上, 実装の小型化, 低価格化, などの効果が期待できる. しかしWSIには, 集積の複雑さが増大するために, 何らかの対策を講じなければ製造 中または動作中における故障の発生確率が無視できない程度に増大する, という問題がある. そこで, 製造時における生存率や動作中における信頼性の向上を図る工夫が必要であり, そのための1つの手段として, PEの配列を再構成する方法が提案されている. 本研究は, メッシュ結合並列計算機をWSIで実現するに際し, フォールトトレランス(耐故障化)の概念を導入することにより, 高速・高信頼・小型・安価な計算機システムの構築を目指すものである. 具体的には, もとのアレーを同じサイズの部分アレーに分割し, 各部分アレーはKungらが提案したPEの行間および列間に1本ずつのトラックと, 1個ずつのスイッチ, および予備のPEをもつ1 1/2-トラックスイッチ方式によって再構成を行うアーキテクチャに対して, 2種類の発見的な再構成法を提案する. また, 2本ずつのトラック, 2個ずつのスイッチ, および予備のPEをもつダブルトラックモデルについては, 1種類の発見的な再構成法について考察する. 本論文では, それぞれの手法に対し, ハードウェアによる実現例について述べ, 計算時間のオーダについて考察する. その結果, 提案手法における再構成に要する計算時間は短く, 動的な再構成に適することを明らかにした. さらにこれらのハードウェア実現例におけるハードウェア量がPE1つ当たり数十ゲート(ダブルトラックモデルの場合は数十~数百ゲート)であるため, PEが通常考えられているCPU(例えばIntelの初代Pentium(300万トランジスタ)程度以上)であれば, 再構成の為の回路の故障は無視できると考えられる. またそれらの物理レイアウトはメッシュ状で規則的であるため, メッシュ結合の超並列計算機をWSIによって実現するときに特に有効であると考えられる. 本論文では, 計算機シミュレーション実験を行い, 再構成効率について提案手法の有効性を示している. |