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Konno,Kazuo 今 野 一 男 |
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北海道 |
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博士(農学) |
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乙 第46号 |
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平成12年3月24日 |
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学位規則第4条第2項該当 |
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網走地方の畑作地帯における有機物および土壌の窒素評価と施肥対応 (Estimation of available nitrogen in organic matters and soils for assessing of optimum nitrogen fertilizer rate of upland crops in Abashiri district) | ||
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窒素は作物生産にとって最も重要な元素であるが、過剰になると作物の品質低下や硝酸の地下水汚染など各種の弊害をもとらす。したがって、持続型農業を推進する観点からは各種有機物資源の有効利用を図りつつ、施肥窒素量の適正化を進めることが必要となる。そこで、本研究では、網走地方の畑輪作における有機物管理の実態をふまえて、有機物窒素や土壌中の可給態窒素の評価法を検討し、それに基づきテンサイに対する窒素施肥指針を策定した。 緑肥および収穫残渣物の窒素評価: 緑肥として、アカクロ-バ(マメ科)、エンバク(イネ科)、レバナ(アブラナ科)を、収穫残渣物として麦稈を供試した。緑肥の化学成分と窒素無機化率との関係をみると、全体としてはC/N比とは密接な関係を示した。しかし、C/N比が低く、リグニン含量の高い緑肥については、(リグニン)1/2/N比が窒素無機化の指標として有効であった。一方、試料の高温乾燥や粉砕処理は窒素無機化率を低下させ、窒素の有機化・無機化の限界値となるC/N比は低い方向にシフトした。緑肥窒素の利用率は、緑肥作物の種類とその栽培条件によって大きく変動した。秋すき込み緑肥の初年目の窒素利用率はすき込み時のC/N比と密接な関係を示し、その回帰式から推定される利用率は、C/N比10 ~15で30~45%、同15~20で20~30%、同20~25で10~20%程度であった。また、無機化率がマイナスからプラスに転じるときのC/N比は30~40程度であった。これらの結果に基づいて、緑肥のC/N比と緑肥または緑肥+麦稈のすき込み量から、後作物に対する施肥窒素の減肥量を設定した。 バ-ク堆肥の窒素評価: バ-ク堆肥の化学成分と窒素の有機化・無機化との関係から、窒素飢餓を回避するための腐熟度指標を次のように設定した。C/N比:25以下(広葉樹)、35以下(針葉樹)、還元糖態炭素/全窒素比:6以下(広葉樹)、10以下(針葉樹)、還元糖割合:20%以下(広葉樹)、30%以下(針葉樹)。作物の窒素吸収量は、無機態窒素+無機化窒素(30℃、12週間)と密接な関係を示した。窒素無機化率はC/N比が低くなるにしたがって大きくなったが、C/N比15~16の場合でも4~5%程度と著しく低かった。作物による窒素利用率は、針葉樹の場合4%程度が上限とみなされたが、広葉樹の場合は腐熟が進むと普通堆肥並に高まる可能性を認めた。 土壌窒素の評価: 土壌窒素の評価は、残存無機態窒素と作期中に無機化する易分解性有機態窒素の両方を評価する必要性を認めた。無機態窒素評価を必要とする要因については、①収穫後の残渣処理や有機物資材の投入などにより無機態窒素の変動が著しく大きいこと、②無機態窒素が溶脱しにくい気象、土壌条件にあること、などが指摘された。化学的評価法を比較すると、易分解性有機態窒素単独の評価法としては、熱水抽出窒素(105℃、1時間)が最も優っていた。一方、無機態窒素と易分解性有機態窒素との同時評価法としては熱水抽出無機態窒素(121℃、1時間)が最も優っていた。この評価法は、当初の無機態窒素と抽出過程で無機化する窒素を同時に測定するもので、迅速かつ簡易であることから最も実用的な評価法とみなされた。春先の無機態窒素量は、有機物管理、前作物などにより変動するが、越冬前の無機態窒素量と比較すると、おおむね70~80%程度とみなされた。越冬前サンプリングによる土壌窒素評価は、診断の精度がやや劣ったが、硝酸溶脱の比較的少ない土壌では、有機物窒素評価との組み合わせにより導入可能と考えられた。土壌の窒素無機化過程は、おおむね一次反応式の単純型モデルに適合した。可分解性窒素量(No)は熱水抽出窒素と比較的高い相関が認められ、Noの簡易評価法として有効とみなされた。一方、無機化速度定数(k)は、Noが多い条件では火山性土が非火山性土よりも低い値を示した。5~9月の地温などから作付け期間のNoの無機化率を算出した結果、無機化率は火山性土27~33%、沖積土33~40%、洪積土40~47%であり、年次間よりも土壌間の変動が著しく大きいことを認めた。 土壌窒素診断に基づくテンサイの最適窒素施肥量: 各種窒素評価法による最適窒素施肥量(Nop)の予測式は、Nop=(最適窒素吸収量-土壌由来の窒素吸収量)/施肥窒素利用率から求めた。すなわち、土壌由来の窒素吸収量は各土壌窒素評価量と無窒素区窒素吸収量との回帰式を用い、最適窒素吸収量を24.5kg ha-1、施肥窒素利用率を78%として作成した。これらによる予測値と実測値との関係をみると、熱水抽出無機態窒素は培養窒素を上まわる高い相関を示し、テンサイの施肥窒素量設定に有効であることを認めた。 |