氏   名
Onuma,katsuhiko
大 沼 克 彦
本籍(国籍)
秋田県
学位の種類
博士(農学)
学位記番号
甲 第139号
学位授与年月日
平成12年3月24日
学位授与の要件
学位規則第4条第1項該当
専  攻
生物生産科学専攻
学位論文題目
ウマおよびウシの早期妊娠因子(Early Pregmancy Factor)に関する研究一ウマEPFの検出とウマおよびウシ団PFの純化の試み一
(Study of mare and bovine Ear1y Pregnancy Factor-Detection of mare EPF and purification of mare and bovine EPF-)

論文の内容の要旨

 Mortomらによって初めてEPFが免疫抑制物質として妊娠初期マウス血清中に報告されて以来、多くの研究者によってEPFの研究が行われて来たが、これまでのところEPFの構造や機能はほとんど解明されていない。また、種々の動物からEPFが検出されているにも拘わらず、ウマEPFの検出と精製に関する報告はほとんどない。本研究はウマの妊娠における血液中のEPFの存在とその推移およびウマEPFの生化学的特性を明らかにしようとした。さらにウシEPFの精製法を見直して、EPF精製法の確立とEPFの特定を試み、以下の結果を得た。

1.ウマEPF測定のためのウマ用ロゼット抑制試験を開発するとともに、他の動物種と同様に、ウマにおいて妊娠と非妊娠を判定することが可能であり、その測定系に補体の必要が無いことを明らかにした。この測定方法は、ウマ属一般に適用することが可能であったことから、ウマの属間のEPFには差の見られないものと判断された。さらに、その検出時期は受精後24~72時間以内から、妊娠の2/3期まで検出することができ、他の動物種の報告に一致した。また、ウマのEPFを精製した結果、ウシの報告と同様にEPF活性物質はCM樹脂に吸着し、DEAEに非吸着であり、SDS-PAGEに明瞭な2本のバンドが認められ、ウマのEPFは分子量14~30KDaに存在することを示唆した。

2、ウシEPF精製法を見直して、EPF陽性のウシ48頭の血液約6001を精製原料として大量のEPF精製法の確立とEPFの特定を行った。最初に、限外濾過により!0~100KDaの濃縮血清分画が18l得られた。このうちの2lを使用してEPFの効率的精製法の検討を実施し、残り16lを用いてウシEPFの大量精製を試みた。まず、血清中に大量に含まれるIgGおよびアルブミンの除去法の検討を実施した結果、33%飽和硫酸アンモニウムによってIgGは除去され、EPF活性はIgG以外の分画に分離されること、また、アルブミンは、熱抽出とエタノール抽出では分離できるがEPF活性は消失することが判明したため、CibacronB1ueSepharoseによる除去を検討し、その吸着分画にはEPF活性は認められず、非吸着分画にEPFか検出された。そこで、これらの方法を取り入れて、効率的にEPF精製ができるか否かをパイロット試験によって試みた。その結果、いままでの方法よりも効率的にEPFが精製された。従って、大量のEPF精製を行ったところ、パイロット試験と同様に多量のEPF活性分画が得られた。得られたEPF活性分画中のタンパク質量は、これまでの報告より5~10倍高いと考えられ、ウシEPFの効率的精製法は本研究で方向づけができたと考えられた。得られたEPF活性分画のSDS-PAGEに明瞭な5本のバンドが認められ、ウシのEPFは分子量20~30KDaに存在することを示した。

3.得られたウシEPF活性分画中に存在するタンパク質バンドをアミノ酸分析に適用して、ホモロジーの検索をおこなった。その結果、分子量42KDaのタンパク質バンドはトランスフェリン(siderophilin)に、20KDa付近の3本のタンパク質バンドはアルブミンに各々、63.2%および85~100%の相同性が推定された。この結果からウシEPFは、これまでEPFであると報告されているシャヘロニン10、チオレトキシンおよびEGFとは全く異なる物質であること明らかとなった。