|
Sasaki,hiraku 佐々木 啓 |
|
山形県 |
|
博士(農学) |
|
甲 第137号 |
|
平成12年3月24日 |
|
学位規則第4条第1項該当 |
|
生物生産科学専攻 | ||
|
反芻動物の第一胃内における脂質代謝に及ぼす濃厚飼料と粗飼料の給与比率の影響とその機構の解明 (Effects of Feeding Ratios of Concentrate and Roughage on Lipid Metabolism of Rumen in Sheep, and Elucidaion of its Mechanism) | ||
| |||
反芻動物の第一胃内における脂質代謝は,3つの特徴があることが知られている.即ち,第一胃内微生物による飼料中脂質の加水分解,飼料中脂質の不飽和脂肪酸への水素添加による脂肪酸の飽和化および微生物による脂質の合成と飼料脂質の摂取があげられる.本論文は,これら脂質代謝の変動要因となる給与飼料との関連に着眼し,濃厚飼料と粗飼料の給与比率(以下濃粗比と略す)が一連の第一胃内脂質代謝にどのような影響を及ぼすか,また,この脂質代謝の機構を解明するための実験を行った.得られた成果の要旨は以下の通りである.
1.ヒツジにおける第一胃内微生物および無細胞腋区分における長鎖脂肪酸の量と組成に及ぼす濃粗比の影響
第一胃内の脂質代謝に及ぼす影響の基礎的知見を得るため,ヒツジに濃粗比8:2(濃厚飼料多給与),4:6(中間配合型飼料給与)および0:10(粗飼料多給与)の給与比で飼料を給与した.その結果,プロトゾア,細菌および無細胞腋区分の総脂肪酸と遊離脂肪酸は,いずれも濃厚飼料の多給にともなって増加した.遊離脂肪酸/総脂肪酸比は,プロトゾアおよび細菌区分では,濃厚飼料の多給にともなって増加したが,無細胞腋区分では粗飼料多給与のとき高く推移する傾向が示された.また,微生物区分のうち,総脂肪酸組成では濃厚飼料の多給にともなってステアリン酸が増加し,遊離脂肪酸組成ではステアリン酸とオレイン酸が濃厚飼料の多給にともなって増加した.無細胞腋区分のうち,総脂肪酸および遊離脂肪酸組成では中間配合飼料を給与するとステアリン酸の割合が高くなることを認めた.これらの結果から,濃厚飼料を多給すると微生物による遊離脂肪酸の合成や摂取が活発になり,中間配合型飼料を給与すると水素添加が促進し,粗飼料多給すると飼料中脂質の加水分解が促進することを示唆した.
2.ヒツジの第一胃内におけるin situ法による飼料中長鎖脂肪酸の消長に及ぼす濃 粗比の影響
1と同じ飼料の給与条件下で,飼料の培養残渣の総脂肪酸および遊離脂肪酸含量と組成をナイロンバッグを用いたin situ法により調べた.培養残渣の総脂肪酸と遊離脂肪酸含量は,濃厚飼料の給与割合の増加とともに高く推移した.また,遊離脂肪酸/総脂肪酸比は,粗飼料の割合の増加にともなって高く推移した.濃厚飼料の多給にともなって,総脂肪酸および遊離脂肪酸のオレイン酸とリノ-ル酸の不飽和脂肪酸は高く,ステアリン酸は低く推移した.また,培養48時間後における遊離脂肪酸のC18の不飽和脂肪酸は,濃粗比4:6と0:10の飼料ではほとんどみられなかった.これらの結果から,濃厚飼料多給時に水素添加の中間物質であるオレイン酸が蓄積し,C18の不飽和脂肪酸への水素添加は濃粗比4:6および0:10の飼料で促進することを示唆した.また,飼料中脂質の加水分解は粗飼料のみ給与すると速やかに行われることを明らかにした.
3.ヒツジの第一胃内微生物由来の脂質に及ぼす濃粗比の影響 |