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おだしま さとる
小田島 聡 |
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岩手県 |
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博士(工学) |
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乙 第2号 |
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平成12年3月23日 |
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学位規則第4条第2項該当 |
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銅酸化物超伝導体における非磁性不純物効果の理論的研究 | ||
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1986年、J.G.Bednorz と K.A.Muller により、 Ba-La-Cu-O からなる銅酸化物が超伝導性を示すことが明らかにされて以来、La-系、Y-系、Bi-系、Nd-系、Hg-系など様々な銅酸化物超伝導体が発見された。従来の超伝導物質に比べ著しく超伝導転移温度(Tc)が高く、特に液体窒素温度以上(~77K)においても超伝導現象を保持する事から、安価な冷却システムで動作可能な超伝導特性を生かした応用が期待されている。また基礎物性においても従来の金属系超伝導体とは異なる振る舞いを示す事から、超伝導発現機構の解明に関連して様々な研究がなされている。従来の金属系超伝導体との相違点として、 1) 高い超伝導臨界温度(Tc) 2) 結晶構造に起因した擬2次元的な電気伝導 3) 遷移金属酸化物であるが故の強い電子間相互作用(強相関電子系) 4) 金属系超伝導体ではみられない、非磁性不純物による超伝導特性の劇的な劣化 などが主な特性として挙げられる。本研究においては、高い超伝導臨界温度(上記1)を示す銅酸化物超伝導体が、非磁性不純物により著しく超伝導特性が劣化する(上記4)原因を解明する事を主目的としており、その前段階として 2) 及び 3) の事実を考慮した、理論的取り扱いの確立を行なう。次に 4) の状況を想定したモデルに対しこの計算方法を適用し、超伝導物質の電子状態及び磁性の観点から、非磁性不純物による超伝導特性の劣化について考察する。
t-J model は正孔濃度ゼロの時ハイゼンベルグモデルに帰着し反強磁性的スピン配列を示すが、正孔が導入されるとホールの運動により、この反強磁性的スピン配列が消失する。これに対し不純物が導入された場合、不純物サイトの周りでは正孔が局在化するため、不純物の周りで反強磁性的スピン配列が消失せずに存在すると解釈される。また実際の物質においては、Zn 2%程度の置換で超伝導性は完全に消失するが、計算結果ではこの置換濃度は系全体が磁気的に乱れる濃度に対応し、この磁気的乱れにより超伝導性が消失したものと解釈される。 |