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大志田 憲 |
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岩手県 |
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博士(工学) |
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甲 第36号 |
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平成12年3月23日 |
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学位規則第4条第1項該当 |
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電子情報工学専攻 | ||
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樹木景観のビジュアルシミュレーションに関する研究 | ||
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近年,コンピュータグラフィックス(CG)は,建設計画等の景観シミュレーション,映画,アニメーション,マルチメディアコンテンツ,サイエンティフィック・ビジュアリゼーションおよびバーチャルリアリティ等,さまざまな分野で用いられており,そのためCG技術に関する研究開発も盛んに行われてきている.このような研究開発の大きな分野のひとつとして,自然現象のビジュアルシミュレーションのためのCG技術の研究開発があげられる.そのなかでも樹木のモデリングやレンダリング法に関する研究はとりわけ活発に研究が行われてきた分野のひとつである.それは,樹木の複雑な形状のCGによる表現それ自体が魅力的であることや,造園設計CADや土木建設用景観シミュレーションなどの分野に幅広い応用を持つためであり,高品質な樹木や森林のビジュアルシミュレーション法が求められている. 本論文では,これらを表現するための,, 本手法により,より自然で印象的な,老木の表現,岩場や傾斜地における樹木景観の生成,季節の森林景観の生成,ガーデニング等のシミュレーション型アミューズメントシステム,および教育支援システムなどが可能となる. 第1章は序論である.研究の背景と目的について述べる.第2章では,これまでの既報告である生長制御機能をもつ樹木の地上部の生長モデルについて述べる.これは第3章 で述べる地上部-地下部間を考慮した生長モデルの開発を行うための基となる樹木の地上部の生長モデルである.また樹木表現に必要な葉の姿勢制御および紅葉表現方法についても述べ,実際の画像生成例も示す.第3章では,地下部である根の生長モデルの提案およびそのシミュレーション例を示す.次に根の生長モデルを従来の地上部の生長モデルと結合した,地上部-地下部間の相互作用を考慮した生長モデルの提案を行い,シミュレーション例を示しその効果を示す.第4章では,樹木の肥大生長モデルを提案をする.樹木の肥大生長は各部のストレスによりその生長量が変化するものであり,本モデルではこのストレス計算と肥大生長のシミュレーションを,ボクセル空間と質点―バネモデルを用いて行うものである.本章では,この肥大生長のモデルとそのインプリメンテーション法を示し,シミュレーション例により,その効果を示す.第5章では,地表面での受光量を考慮した森林の紅葉のシミュレーション法を提案する.本方法は,これまで提案されている森林の紅葉の表現法においては,葉の色彩変化は時系列データにより定められていたものを,第2章で述べる受光量を考慮した葉の色素の変化モデルを適用し,これまでの樹種に応じて一定とされていた色彩変化過程を,樹木の配置に依存する受光量と標高値の違いを考慮したものとし,より自然な紅葉のアニメーションを可能としたものである.第6章で,結論と今後に残された課題を述べる. |