氏   名
Nagayoshi,Takeshi
永 吉 武 志
本籍(国籍)
福岡県
学位の種類
博士(農学)
学位記番号
甲 第129号
学位授与年月日
平成11年3月24日
学位授与の要件
学位規則第4条第1項該当
専  攻
生物環境科学専攻
学位論文題目
蛇行水路における交互砂洲の移動抑止限界と河岸沿い河床形状変化に関する実験的研究
Experimental studies on the suppresion limit of alternate bars and the bed-form changes along river banks in meander channels

論文の内容の要旨

 直線的な河道に形成された交互砂洲は,洪水中に,その形状や接続パターンを保ちながら下流へずれ動いていくが,左右に次々に湾曲する蛇行河道では,交互砂洲の移動が抑えられる場合がある.交互砂洲の移動の有無を分ける要因は河道の蛇行の強さによっていて,蛇行角がある限度を越えて大きくなったとき,交互砂洲の移動が抑えられる.交互砂洲が形成された河道において,洪水流は,河岸沿いの淵下流部付近に集中した後,対岸下流の寄洲と瀬に向って拡散し,ふたたび河岸沿いで集中するという流況を繰り返す.洪水水衝部は,そのように河岸沿いの流れの集中するだけでなく,河床深掘れを生じる箇所でもあり,天然河岸であれば河岸侵食を起こし,改修河道では護岸の被災を受けやすい河岸になる.河川利水の立場から見れば,交互砂洲の移動と停止は,基本的に平水時のみお筋の安定・不安定に対応し,みお筋の安定が得られる限界蛇行角の解明は同様に重要な課題である.

 著者は,交互砂洲の移動抑止限界を,実際の蛇行形状に近いとされている Sine-generated curve 蛇行をなす水路において実験的に明らかにするとともに,砂洲の挙動と河岸沿いの河床形状変化との関係,みお筋の安定・不安定との関係についても解明した.蛇行水路の実験から得られた主要な結果を3章に分けて説明している.実験は,水路幅26cmの水路で,[蛇行波長(λ)/水路幅(B)]=6~18の範囲について最大蛇行偏角(ω)を変化させた34種類の蛇行水路で実施された.

Ⅰ.蛇行水路における交互砂洲の移動抑止限界蛇行角

 交互砂洲の移動を抑止する限界蛇行角(ωc)は,λ/Bの値が6~12という実河川の交互砂洲に対応した範囲では,流量や勾配,粒径などの水理諸量などに関わらず,それぞれのλ/Bでほぼ一定の値をとって,λ/Bの増大に従って20度から10度へと減少する.これは,従来の研究をほぼ追認する結果であった.しかしλ/B=14~18という蛇行波長の長い水路での実験では,水理諸量の組合せの違いによって限界蛇行角の違いが次第に大きくなること,とくに,λ/B=18では,いずれの場合にもωcをλ/B=16までより大きくしないと砂洲移動を抑止できないことを初めて明らかにした.

Ⅱ.蛇行水路のおける砂洲の挙動と河岸沿い深掘れ変動との関係

 実河川において多く見られる交互砂洲長に対応したλ/B=10および12の場合を中心に,直線水路で砂洲が移動する場合から,大きな蛇行偏角の水路で完全に砂洲の移動が抑えられる場合までの河岸沿い深掘れの変化特性を明らかにしている.その結果,(1)蛇行偏角が小さい間は,砂洲が移動するにつれて河岸沿いの深掘れも順次下流に移動するが,偏角が大きくなるにつれて砂洲の移動は見られ,深掘れ位置のずれ動きは見られても水路の蛇行形状から深掘れを生じやすい凹岸から凸岸にかけての河岸沿いで深掘れ傾向が一定化してくること,(2)限界蛇行角を超えて偏角が大きくなると,凹岸下流河岸での深掘れは一定化し,凸岸下流に堆砂域が一定化すること,(3)蛇行偏角が大きくなると深掘れも大きくなること,(4)通水流量が大きくなると,移動の場合は深掘れはかえって小さく,停止の場合は大きくなること.等,これまでの研究より広範囲で詳細な分析がなされている.

Ⅲ.蛇行水路における砂洲移動とみお筋変動との関係

 平水時の流路であるみお筋は,洪水中に形成されている砂洲の形状に支配されて,洪水減水後に河床の低位部を連ねて形成される.したがって,基本的には洪水中に砂洲が下流に移動する場合には,洪水前後でみお筋が変化してしまう.今回の実験においても,λ/B=8~12の範囲の蛇行水路では,砂洲の移動・停止とみお筋の安定・不安定が完全に対応していた.しかし,蛇行波長の短いλ/B=6とλ/B=14以上の蛇行波長の長い水路において,砂洲は移動するが,河岸沿いの深掘れの位置が一定化していてみお筋としては安定と見られる場合のあることが判明した.