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Song,De quan(ソン デ クァン) 宋 徳 全 |
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中華人民共和国 |
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博士(農学) |
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甲 第128号 |
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平成11年3月24日 |
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学位規則第4条第1項該当 |
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生物資源科学専攻 | ||
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急勾配敷設時におけるオープン型パイプラインの水理特性に関する研究 (Studies on Hydraulic Characteristics of Open Type Pipeline with Steep Slope) | ||
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オープン型パイプラインのスタンド間に急勾配に敷設された単一管路においては,各々の水理条件の下で,種々の流況を呈する。従来の一般的な水理設計法は,上流側のスタンドにシール高さを確保する方法である。しかし,シール高さを確保すべきかどうかは判然としていない。これは,シール高さを確保しない場合には管内にどのような流況が生ずるのか明確になっていないことに主に起因している。 本研究では,最初にスタンド間に急勾配に敷設された単一管路内に生ずる無通気状態と通気状態での諸流況を対象に,管内流況と管路底圧の様相を実験的に調べ,水理設計のための基礎資料を得た。
次に,管内諸流況の発生領域を実験的に調べ,管内全域満流時の境界を指標にして管内諸流況の発生領域を検討した。
そして,管内一段跳水の水理特性を実験的に調べて検討を加え,また,現地における管内流況の検討を試みた。
本論文は,緒論,Ⅰ.管内流況と管路底圧の様相,Ⅱ.管内諸流況の発生領域,Ⅲ.管内跳水と現地流況から構成されている。
Ⅰ.における研究成果は次のようである。
1)管流入口における円形堰とオリフィスの流れの流量係数を実験的に示した。これらの流量係数は流況推定を行う際に有効となる。
2)実験流況を基に,無通気状態と通気状態にわけて管内流況を模式的に分類した。
3)下流スタンド水深の設定の仕方による管内流況の差異について示した。
4)管路底圧の顕著な変動を伴う移動跳水等の流れを対象に,管路底圧の特徴を明らかにした。
5)管流入口上流部に隔壁を有する場合の管路底の減圧上(負圧の絶対値)の効果について示した。
Ⅱ.における研究成果は次のようである。 1)管内全域満流と管内に空気塊を有する流れ(無通気状態)の境界ではH0/D≒1.5であることを示した(H0:管流入口前の水深,D:管径)。
2)管流入口前における水位低下値(無通気状態)は,ほぼ管流入口直下流の空気塊内の圧力水頭に変換することを明らかにした。
3)管内全域満流と他の流況は水理的関係式を用いて区分できることを実験的に示した。
4)管内に空気塊を有する諸流況の発生領域の特徴を明らかにし,移動跳水の発生領域式を示した。
Ⅲ.における研究成果は次のようである。
1)管内跳水による損失水頭を調べたところ,下流水深が高い場合には計算値と実測値はほぼ一致したが,下流水深が低い場合には両者の値に差異が生ずることが判明した。
2)管内跳水の発生位置を調べたところ,L/Dが小さくなると計算値と実測値には差異が生ずることが判明した(L:跳水から管流出口までの距離,D:管径)。この差異を空気の混入程度による影響とした場合の補正式を示した。
3)本実験によって得られた管内諸流況推定の関係式を用いて,現地(岩手県胆沢平野2号用水路)における管内流況の検討を試みた。その結果,推定流況は現地における流況とほぼ一致した。
本研究によって,水理設計に向けての各々の水理条件下における基本的な水理特性が明らかになったと思われる。新たな水理設計法の基礎が提示できたものと思われる。今後,現地等における管内諸流況の再確認と共に本研究成果の具体的な水理設計への活用が課題となる。 |