氏   名
サハ ウタム クマール
Saha,Uttam Kumar
本籍(国籍)
バングラデッシュ(Bangladesh)
学位の種類
博士(農学)
学位記番号
甲 第109号
学位授与年月日
平成11年3月24日
学位授与の要件
学位規則第4条第1項該当
専  攻
生物生産科学専攻
学位論文題目
Hydroxy-Interlayered in Expandable Phyllosilicates and their Reactions with Phosphate, Potassium and Ammonium
(膨張型粘土鉱物におけるハイドロキシル層間物質および正リン酸,カリ,アンモニウムとの反応)

論文の内容の要旨

 各種のハイドロキシアルミニウム(HyA)およびハイドロキシアルミニウムケイ酸塩(HAS)が層間に存在する2:1型粘土鉱物が土壌中には認められている。2:1型粘土鉱物の層間にHyAやHASを人工的に調整したスメクタイト(Mt)やバーミュキュライト(Vt)を用いて、その化学的、鉱物的な性質の一部については既に調べられている。本研究では、層間に存在するHyAやHASのOH/AlやSi/Alのモル比が異なるスメクタイ(HIM)とバーミュキュライト(HIV)を合成し、その合成鉱物の正リン酸イオンの吸着、カリ、アンモニウムイオンの固定と交換性を調べた。得られた結果の概要は以下の通りである。

  1. HIMやHIVの永久荷電は大幅に減少し、代わりに変異荷電量は増加した。
    HIMやHIVでは全表面積および内表面積が減少した一方、外表面積がやや増加した。
  2. HIMおよびHIVのリン吸着現象はラングミュアー式で解析が可能であった。HIMやHIVのリン吸着の減少は層間のHyAやHASのOH/AlやSi/Alモル比の増加と関連していた。
  3. リン酸吸着は鉱物の端にある構造Alないし外表面や層間にあるHyAやHASに由来するOHやOH2とリン交換する領域Iでの吸着反応とHyAとHASの構造内にあるAlにリンクしたOH基との交換による領域IIの反応が考えられた。
  4. HIMについては、HyA-リン酸複合体やHAS-リン酸複合体は層間に安定的に存在せず、またHAS-VtについてもHAS-Pは安定的に存在しにくい。一方、HyA-Vt ではHyA-リン酸複合体が層間に残存した。このことは2:1:1型鉱物が多い土壌でのリン酸イオン付加による風化過程の促進を示すものである。
  5. アンモニウムとカリイオンの吸着特性についてHyA/HAS-VtとHyA/HAS-Mtでアンモニウムとカリの添加量を変化させて調べた。HyA/HAS-Vt、HyA/HAS-Mt共にカリ、アンモニウムイオンの固定能が交換能に比べて大きく減少した。これはMt、Vtの層間にあるHyAやHAS がカリ、アンモニウムイオンの固定を妨害しているためであると解釈した。
  6. Vtに固定されたAlやAl+Si量はカリやアンモニウムイオンの固定量の指標とみなせる。
  7. カリとアンモニウムイオンの固定量は直線的な関係を示した。この結果は、カリとアンモニウムイオンの固定現象が同一の機構に起因していることを示している。

 本研究において得られた成果は、酸性土壌中の2:1型粘土鉱物の生成および変化のみならず、類似の土壌鉱物を含む土壌環境の肥培管理および土壌の生態学的保全の観点から有用と考えられる。