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ロドルフォ エス エスカバルテ ジュニア Rodolfo S. Escabarte Jr |
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フィリピン(Philippines) |
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博士(農学) |
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甲 第108号 |
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平成11年3月24日 |
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学位規則第4条第1項該当 |
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生物生産科学専攻 | ||
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Evaluation of Growth and Nitrogen Utilization Efficiency of Direct (東北地方での直播および移植水稲の播種・移植期および窒素肥料の違いが生育、基肥窒素の利用率に及ぼす影響) | ||
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水稲の直播栽培は低コスト化など日本の稲作には避けて通れない問題の一つと考えられる。しかし、直播水稲栽培について、移植栽培と比較した施肥窒素利用効率などの研究は熱帯ではなされているが、温帯地方とくに東北地方のような寒冷地での研究は少ない。本研究では、東北日本での直播栽培の窒素利用効率について移植栽培と比較し以下の実験を行った。実験Ⅰでは、通常栽培期間と播種、移植時期を遅らせた時期を設定し、基肥窒素の利用について検討した。実験Ⅱでは、緩効性肥料を利用して、窒素供給時期と肥料利用効率、施肥効率を直播栽培、移植栽培で比較した。得られた結果の大要は以下の通りである。 実験Ⅰ①移植栽培、直播栽培に関わらず土壌中のアンモニア態窒素はほぼ同時期に消失した。一方、播種期を遅らせた場合、土壌中のアンモニア態窒素が存在する期間は通常の播種期に比較して短くなった。②直播栽培水稲の地上部乾物重、LAIは移植栽培比べると生育初期時期の気象条件により、暖かい年ないし播種時期を遅らせた場合は大きく、平年並みの年は小さくなった。しかし、直播栽培水稲の茎数は気象条件によらず常に移植栽培水稲に比較して大きく最高茎数時には1.5倍以上となった。③直播栽培の水稲の窒素吸収量は1996年度は移植栽培より大きかったが、1997年度はほぼ同程度であった。栄養生長期間の水稲の窒素吸収経過は移植時期によらず直播栽培、移植栽培ともに指数式で示すことができた。基肥窒素の吸収量は移植栽培で直播栽培を常に上回っていた。通常の播種、移植時期では基肥窒素の吸収量は移植栽培で直播栽培の約2倍であった(1996年度)。播種時期、移植時期を遅らせると基肥窒素の水稲による吸収量は移植栽培、直播栽培で大きな差が認められなかった。④全窒素吸収量、乾物重と基肥窒素の吸収量の関係は直播栽培、移植栽培ともに指数的であった。しかし同一全窒素吸収量に対する基肥窒素吸収量は移植栽培の水稲で直播栽培より常に高い値を示した。この結果は、水稲の生育初期の基肥窒素の吸収が全窒素の吸収を促進していないことを示している。 実験Ⅱ①肥料の種類によらず1996,1997年度は成熟期の直播栽培の水稲の乾物重は移植栽培のそれと比較してほぼ同じであった。しかし、気温が通常より高い年次の1998年度(エルニーニョ現象による)は直播栽培の水稲の乾物生産量は移植栽培の水稲より大きくなった。1998年度は硫安7gNm-2施用区と緩効性肥料(LP100,5gNm-2)施用区の乾物重がもっとも大きな値を示した。②緩効度のもっとも高い肥料(LPS100)を施用すると、栄養成長期の窒素吸収量は他の肥料区より低くなった。しかし成熟期の窒素吸収量は他の肥料区とほぼ同程度となった。③葉身の窒素濃度は肥料の種類や直播栽培、移植栽培によらずほぼ同じであった。しかし、生育初期では直播栽培で葉身の窒素濃度が高い傾向が認められた。この傾向は、高温年で地上部乾物重が移植栽培より大きかった1998年度にも認められた。この結果は、熱帯で直播栽培では栄養生長期間中の大きなLAIのため葉身窒素濃度が低下するという事実と反対の結果であった。④直播栽培と移植栽培では肥料の種類によらずその収量はほぼ同程度であった。しかし、1998年度ではLP100区の直播栽培では移植栽培より収量が高かった。肥料効率はは緩効性肥料で施肥量が少ない結果緩効性肥料区で高い値となった。⑤LPS100区では、前半の肥料由来窒素の吸収が押さえられる反面、生殖生長期間、登熟期間の肥料由来窒素の吸収が盛んであった。この区での収量は、一穂当たりの粒数が増加し、さらに生育後半までの窒素吸収が行われることにより高い結果となった。⑥直播栽培水稲のLPS100由来窒素の吸収量は移植栽培水稲のそれを上回った。これは、直播栽培水稲の生育期間が移植栽培のそれより長かったためである。 |