氏   名
Yang,Yong li(ヤン イオンリ)
楊 詠 麗
本籍(国籍)
中華人民共和国
学位の種類
博士(農学)
学位記番号
甲 第106号
学位授与年月日
平成10年9月30日
学位授与の要件
学位規則第4条第1項該当
専  攻
生物資源科学専攻
学位論文題目
高濃度炭酸ガス処理が青果物の呼吸代謝に及ぼす影響
( Effects of an Elevated CO2 Atmosphere on Respiratory Metabolisms in Horticultural Crops )

論文の内容の要旨

 サヤインゲン、エダマメ、キュウリを用い、高濃度炭酸ガス処理中の呼吸量、呼吸商を調べたところ、いずれも呼吸量は増加したが、呼吸商はサヤインゲン、エダマメでは1.4以上となり、キュウリは1以下となった。理論的計算値から推定すれば、前者は有機酸を呼吸基質とし、後者は糖を基質としていずれも一部グリオキジル酸回路を経由して呼吸をしているものと推察された。

 これらに高濃度炭酸ガス処理で呼吸量の減少するブロッコリー、イチゴを加え、処理中の有機酸含量を測定した。炭酸ガス処理時間が長くなると、いずれの供試材料もコハク酸含量が急増する傾向を示した。従来の文献でもこの現象は多く確認され、炭酸ガスがコハク酸脱水素酵素の活性を阻害すると考えられていたが、呼吸商から判断すると、グリオキジル酸回路の活性化も考えられる。一方フマル酸は呼吸量の増加するサヤインゲン、エダマメ、キュウリで多くなり、呼吸量の減少するブロッコリーとイチゴでは無処理より少なくなった。従って炭酸ガスによるコハク酸脱水素酵素阻害の程度は種によって異なることが想像される。また保有含量の多いリンゴ酸とクエン酸は、いずれの材料も、炭酸ガス処理時間が長くなるにつれて、無処理区より減少した。

 キュウリとマメでケト酸含量を測定したところ、炭酸ガス処理で呼吸商が高くなるサヤインゲンで2-オキソグルタール酸が増加し、呼吸商が低くなるキュウリではこの酸が処理時間が長くなると減少した。

 これら種によって異なる反応の一つ一つを解明する必要があるが、まず始めに炭酸ガス処理によって2-オキソグルタール酸が減少し、コハク酸が蓄積するキュウリを取り上げ、NADP−イソクエン酸脱水素酵素と2-オキソグルタール酸脱水素酵素に及ぼす炭酸ガス処理の影響を調べたがいずれの酵素も炭酸ガス処理の影響は認められなかった。しかし健全なキュウリから抽出した酵素液を用い、密封した反応管内のヘッドスペース大気中の炭酸ガス濃度を増やしてやると、両酵素とも反応生成物の生成量が無処理より少なくなった。その影響は酵素で異なり、イソクエン酸脱水素酵素ではヘッドスペース炭酸ガス濃度60%で2-オキソグルタール酸の生成速度は無処理の1/5、2-オキソグルタール酸脱水素酵素ではヘッドスペース炭酸ガス濃度60%でコハク酸の生成速度は無処理の1/2となり、酵素周りのガス濃度の影響はイソクエン酸脱水素酵素で強かった。ただこの反応は実際には炭酸ガス処理材料を大気中に移すことによって解消するものと思われる。

 同じくキュウリを用い、炭酸ガスがグリオキジル酸回路のイソクエン酸リアーゼとリンゴ酸シンターゼに及ぼす影響を検討した。結果として両酵素とも60%炭酸ガス処理中、時間とともにその活性が増加した。炭酸ガスが両酵素の活性を誘導するという報告は今までになく全く新しい知見である。