氏   名
村 岡 一 信
本籍(国籍)
日 本
学位の種類
博士(工学)
学位記番号
甲 第18号
学位授与年月日
平成11年3月23日
学位授与の要件
学位規則第4条第1項該当
専  攻
電子情報工学専攻
学位論文題目
降雪・積雪景観のビジュアルシミュレーションに関する研究

論文の内容の要旨

 コンピュータグラフィックス(CG)による季節の自然景観映像の生成,すなわち,春の新緑や花吹雪,夏の深緑や積乱雲,秋の紅葉や絹雲,冬の枯れ木や降・積雪などは困難な問題を数多く含む魅力的なテーマである。本論文では,これら四季の中でも冬を取り上げ,冬季の自然景観映像のための雪のビジュアルシミュレーション法について提案する。

 自然の降雪・積雪現象では,降雪中の雪では地表付近の気流の影響を受け複雑な動きを見せ,物体に積もる雪は降雪の進行とともに,それを丸くしたような形から冠雪などの雪独特の形へと変化し,降雪後も融雪により刻々とその姿を変える複雑なものである。さらに,雪の質感は結晶や不定型な氷粒からなるその複雑な構造を反映したものといえる。これらのCGによる表現は,いまだ十分な成果が上げられているとはいえない。

 本論文では,これらを表現するための,

 (1)降雪中の雪片のシミュレーション法,

 (2)降雪直後に形成される積雪形状を自動生成する手法,

 (3)融雪シミュレーション法,

 (4)降雪雪片および積雪の質感を表現するための画像生成法

について提案する。

 このため,まず,序論では,雪のビジュアルシミュレーションに関する従来の研究について述べ,本研究の位置づけを明確にする。以降の章では,それぞれの提案手法について以下の順で示す。

 第2章では,(1)の降雪のシミュレーション法について,雪片の動きに影響を与える気流の場の生成法を示し,それに基づき行動する雪片の運動方程式を与える。

 第3章では,(2)の降雪直後の積雪形状の自動生成法について,仮想の“雪粒子”に基づく積雪モデルを示し,実験例により形状制御パラメタの意味を明らかにする。さらに,積雪形状の制御を直感的で使いやすいものとするための,雪が生成される雪雲内と地表付近の“仮想の気温”に基づく形状制御法について示す。

 第4章では,(3)の融雪シミュレーション法について,まず,実際の融雪の要因を整理し,それに基づく日射や地熱,物体からの熱放射を考慮した熱伝搬シミュレーション法を示す。さらに,(2)で生成した積雪形状を初期形状として融雪シミュレーションを行った結果により手法の効果を示す。

 第5章では,(4)の降雪雪片に対するレンダリング法について,降雪雪片専用の手法と,微細な表面構造を持つ物体一般に適用可能な手法を示し,その効果を実験例によって示す。

 第6章では,(4)の積雪のレンダリング法について,ボリュームレンダリングに基づく手法を示し,画像生成例によりその効果を示す。

 最後に,結論において,本手法の特徴をまとめ,残された課題について述べる。