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金 載 宗 |
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大韓民国 |
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博士(工学) |
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甲 第2号 |
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平成11年3月23日 |
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学位規則第4条第1項該当 |
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物質工学専攻 | ||
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トリアジンジチオールを用いる機能性高分子材料の合成に関する研究 | ||
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トリアジンジチオールは高い熱的安定性やチオール基の反応性を持つため、重金属の除去剤、ゴムやプラスチックの架橋剤、金属―プラスチックや金属―ゴムの接着剤、金属の表面処理剤などに広く使用されている。特に、ポリ塩化ビニルやエピクロヒドリンの様な水素原子を含むポリマーの架橋剤として大変効果があることが知られている。この様に高い反応性を持つトリアジンジチオール化合物をポリマーのモノマーとして検討した報告例はない。そこで、本研究では様々なアミノ基を導入したトリアジンジチオールとジハライド誘導体から機能性トリアジンジスルフィドポリマーを合成し、ポリマーの性質や特性について検討することを目的とした。 ポリトリアジンジスルフィドの反応は6―置換―1、3、5―トリアジンー2,4―ジチオールと機能性ジハライド誘導体から相間移動触媒であるセチルトリメチルアンモニウムブロミドを用い、二トロベンゼン(10ml)と水酸化ナトリウム(10.2ml)の界面重縮合により行った。 合成したポリトリアジンジスルフィドは高分子量で定量的に得られ、THFやクロロホルムなどのハロゲン系の有機溶媒に溶解した。これらのポリマーはクロロホルムまたはテトラヒドロフラン(THF)によりキャストフィルムを作製することができ、熱的性質、機械的性質、光学性質、表面性質等について検討した。6―置換―1、3、5―トリアジンー2、4―ジチオールとジブロモアルカンからポリ(6―置換一1、3、5―トリアジンー2、4―ジチオメチレン)を合成した場合、このポリマーはガラス転移温度が室温以下の柔軟なポリマーであり、引張強度が19-30MPa、破断伸びが620ー628%である熱可塑性エラストマー(TPE)の性質を示すことが明らかとなった。又、トリアジンジスルフィドポりマーの側鎖及び主鎖に導入したメチレン鎖の長さが長くなると共に、ガラス転移温度(Tg)が低下する傾向が見られた。これらのポリマーの特徴としては一つのTgを持ち、外力による反複ストレスに対する弾性回復率が95~99%の優れた弾性力を示した。これらの性質は分子構造やその弾性力は、ソフトセグメント/八一ドセグメントの共重合により得られる既存TPEと比べて大きく異なる特徴を示し、現在商品化されている既存TPEの大きな問題点である反復使用によるエラストマーの疲労劣化やリサイクルによる弾性力の低下などが大きく改善されたことから、新しいエラストマー材料として実用化が期待される。 一方、フツ素系ポリトリアジンジスルフィドを合成し、得られたポリマーの水及びジヨードメタンによる表面接触角について検討した結果、接触角はポリマー分子構造内のフツ素原子の位置や数により、異なる値を示し、ポリマーの主鎖よりも側鎖にフツ素原子をより多く導入することにより高い接触角を示した。本研究で得られたフツ素系トリアジンジスルフィドポリマーは代表的なフッ素系樹脂である四フツ化エチレンと同様に水に対して高い表面接触角(111°)を示すことから、フッ素系研究分野に新しいポリマーを提供することが期待される。 以上の研究により、高い反応性を持つトリアジンジチオール誘導体から高分子量のポリトリアジンジスルフイドを合成し、その性質がポリマーの主鎖及び側鎖に導入した置換基によりそれぞれの機能性性質を持つことを明かとした。これらの性質はそれぞれの新しい構造や特徴を持つ機能性高分子材料として、今後実用化が期待される。 |