身近な図書館へ

図書館部門兼務教員  井 上 祥 史

情報メディアセンターの図書館部門の会議に初めて参加させていただいたとき,中期計画に関連した図書館部門の評価項目の多様性に驚かされました。幸いにも齋藤図書館部門長と前任の兼務教員である佐藤芳彦先生のご尽力のおかげで,殆どの項目について実施済みか実施中で,高い評価を得られる見通しが得られていることを知り,ほっと胸をなでおろしたものでした。

 そうした中で図書館の情報化をさらに進めるために,岩手大学リポジトリの構築に向けて動き出すことになりました。これまで岩手大学では図書館情報化に多くのサービスを提供してきており、できるだけ多くの領域をカバーするように他大学と共同で電子ジャーナルを購入するなどの努力をしています。このような情報化に加えて岩手大学リポジトリは、内部からの学術情報を外に向けて全文公開するもので、同時に全国の研究機関と結んで相互に必要な文献を閲覧することができるようになります。登録されるものには学内外の投稿論文や学位論文、研究会や講義の資料などがあります。研究会資料や学位論文そして講義資料まで載せるリポジトリの目的が不明確だという意見を学生や教員から聞くことがあります。しかし学位論文に多く付言されている研究の背景や目的などの項目は、これから学んでいこうとする学生や社会人にとって誠実に書かれた格好の学問のアウトラインの指南書でもあり、研究方法も最新のものを反映しています。同じように講義資料も学問分野の項目量を具体的に知ることのできる生きた資料です。また、市販されることの無い研究会やセミナーの重要な報告などはリポジトリに載せることによりその貴重な価値を誰でも享受することができます。このような登録や利用の仕方によって岩手大学の構成員が多面的にリポジトリに係わることにより、さまざまな価値を共有することのできるシステムに発展していくことを願っています。

 図書館は図書貸し出しや返却・購入図書や製本・カード整理・電子化など管理運営に加えて、岩手大学の構成員の教育研究環境を支援するため、資料の調査・検索や複写サービスなどに努めています。電子化や自動化が進む中で図書館業務も変化してきており、中には少数のスタッフで管理運営をしている図書館も増えてきています。またレポートや課題を簡単にネットで調べてコピーして済ましたり、ネットにないからそれ以上調べないであきらめてしまうなどの学生も増加しています。このような状況の中に埋没して行かないためには、文献の探索方法をアドバイスして情報の信頼度や背景の考え方を知る営みを根気よくサポートするなど、新しい図書館のあり方が重要になってきていると考えられます。教員や院生にとっても電子ジャーナルなどを通して図書館への依存度はだんだん大きくなって来ていると実感しています。これまで以上に図書館を身近に利用して、さまざまな課題を解決していく生きた知の拠点として図書館を豊かに育てて戴けるよう願っています。

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