最初の「兼務教員」に就任して

図書館部門 兼務教員  佐 藤 芳 彦

 本年4月1日より図書館は、同じく既設の情報処理センター及び岩手大学ミュージアムとともに、岩手大学の教育支援施設の1つとしての「情報メディアセンター」 (図書館部門、情報処理部門、ミュージアム部門の3部門から構成されている)の1部門として再編されるとともに、そのために「兼務教員」のポストが新設されました が、この新たなポストに人文社会科学部(教授、欧米史学)から就任しました。

 就任に際して、中嶋図書館長(兼 情報メディアセンター長・副学長)からは、館長の一般的な補佐役とともに、とりわけ「教育」面での兼務を指示されるとともに、 図書館4階に研究室よりもかなり広く、また見晴しのよい部屋を用意していただきました。それ以来、本務での授業(前期には毎週6コマ、プラス非常勤1コ マ)等の 終了後の多くをこの部屋で兼務に従事してきましたが、その場合、自ら設定した最初の具体的な課題は、「教育」面の兼務として、具体的に、何をどのようにしたらよい のかということの模索でした。

 現状と課題の把握のために、まず館長から示唆された岩手大学附属図書館点検評価 委員会の報告書たる 『岩手大学附属図書館の現状と課題』(平成16年3月)[ 図書館 HPに全文(pdf)掲載 ] を通読したのち、「図書館利用案内」を片手に館内を探検(?)し、また図書館のHPを確認し、さらに東北地方の主要大学の附属図書館のHPを も確認することによって、ようやく大学図書館の置かれている現状を理解しえましたが、その後、とくに「教育」面からの具体的な課題を考える際の手掛かりとなったの は、この『図書館時報』の第36巻2号(通巻95号、2004年3月)[ 図書館HPにHTML形式で掲載] の冒頭に掲載されている 「アメリカ大学図書館訪問記 図書情報係 遠山正宏」でした。

 これは、日本の(具体的には本学の)大学図書館と対比しつつ、アメリカの大学図書館の現状を専門家の視点からみて記録したところのまさに「研修報告書」たる実を もつものであり、通読した読者に対して、日米間での客観的な現状の相違の指摘から、その相違のもつ意味如何、さらにその背景如何等を「問いかけてくる」ものがあると いえるでしょう。それを教育面のみに限定して、あえて図式化していえば、「大概の授業」が「20人ほど」のクラスで「討論」形式で行われていることをいわば〈背景〉 として、「大半の授業科目で最低1回は司書が図書館利用法、情報リテラシー教育のようなものを教えている」、「クラス単位で指導を受けた学生は、その後・・・図書 館に来て、さらに指導を受けることもある」、「4年間のうちに基本的なことから専門的なことまで学べることになる」、「このような活動のせいか、卒業後、博士号を 取得する学生の割合」が「研究の仕方を習得済み」のために、高い、と(3~4頁)。まさに大学図書館の面から、「情報」の国アメリカ、情報に基づいて競争し、個性を 輝かせ、そして夢を実現する国アメリカを〈意味〉している、といえるでしょう。

 この遠山「訪問記」が語りかけてくるもの、それを本学の、経験的には本務である学部教育の学生の現状と対比する時、そこから一定の課題がみえてくるようです。

 中嶋館長の指摘する「利用者の個々の支援ニーズを敏感に捉えて適切に対応し得る体制をいかに整備できるかが不可欠である」(『現状と課題』、2頁)ことを基礎視 点としていえば、法人化の初年度である平成16年度には、最も基礎的利用者である「新入生」を対象とした教育支援策(基礎編)を検討し、具体的な目標としては「情 報メディアセンター」の部門間の連携を強化しつつ、平成17年度以降の新入生に対して、高校までのいわば主観的な「読書感想文」作成の段階(「感想」!)から、大学 での客観的な「学術論文」作成の段階(「立証」!)への「転換」を図るような、教育支援体制(基礎編)を(必要により、「大学教育センター」とも協議しつつ)構築 することを考えることにしてはどうであろうか、と。ご理解とご協力を願う次第です。

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