情報メディアセンター図書館に求められるものとは・・・

情報メディアセンター長  大 塚 尚 寛

 岩手大学では、平成16年4月の法人化に併せて、それまでの附属図書館、情報処理センター、ミュージアムの3施設を統合して「岩手大学情報メディアセンター」が発足し、図書館の名称も標題のようになりました。一般に大学の図書館は、○○大学附属図書館という名称が多く、情報部門と一体となった組織形態を取っているのは、国立大学法人では本学を含めて4大学しかありません。しかもミュージアムまでも包括しているのは、岩手大学のみです。これら三位一体となった組織の特徴を、今後どのように活かして行くかが重要な課題と考えています。

 さて、大学図書館の役割は、①大学教育に関連する幅広い教養図書及び専門図書を整備して、学生が自主的に学習するための環境を整えること、②大学における研究を遂行する上で必要な学術情報を提供して、研究支援を行うことが主たるものです。これに加えて法人化以降は、③地域に開かれた図書館として社会に貢献することも求められています。

一方、図書館を取り巻く環境は、近年、大きく様変わりしています。第1の要因は、インターネットの急速な普及です。これまで図書館に足を運んで検索していた情報が、PCや携帯電話等の情報端末から瞬時に得られるようになったことです。これにより、①の役割が低下していることは否めません。図書館利用者数や貸出冊子数の減少という形で如実に現れています。第2の要因は、電子ジャーナル、データベース等の電子媒体の普及です。②の役割に関連して、特に理系教員からの電子ジャーナルの利用希望が増加しています。今後は、紙媒体(冊子体)図書の収蔵限界の課題とも併せて、紙媒体と電子媒体の両者を提供する形態への転換が必要と考えられます。しかし、これに立ちはだかる大きな課題が、電子ジャーナル等の価格上昇です。毎年の運営費交付金の削減のなかで、現在購読中の電子ジャーナル等の継続も困難な状況になりつつあります。

これらの問題を解決することが、図書館の当面の課題と捉え、現在検討を進めています。①に関する課題では、学生が自由に談話や討論を行える「ラーニング・コモンズ」とよばれる共同学習スペースの設置や夜間、土・日曜日を含めた開館時間の延長等により、学生にとって利用しやすく、居心地の良い「知のアメニティ空間」を提供することも解決方策の1つになると考えています。具体的な対応の一例としては、本年4月から土・日の開館時間を30分、閉館時間を1時間繰り下げて開館時間を30分延長することにより、利便性の向上を図ることとしました。また、②に関する課題解決の一助として、「機関リポジトリ」の整備と公開が考えられます。リポジトリとは、大学の研究成果(研究論文、学位論文等)や教育成果(授業資料、講義ノート等)をデジタル化して収集・保存し、Web上で無償で提供するシステムです。各大学や研究機関がリポジトリを整備して世界に向けて情報発信することにより、将来的に電子ジャーナルに代わる機能を発揮することが期待されます。本学でも、平成19年8月から「岩手大学リポジトリ」を公開しており、論文登録等の整備を順次進めています。リポジトリの公開をはじめ、電子図書館としての機能を充実していくためには、情報処理センターとの連携体制が不可欠です。

③に関しては、平成20年7月に策定された「教育振興基本計画」の中に「図書館が住民にとって身近な『地域の知の拠点』として、だれもが利用しやすい施設として機能を果たすよう促す。」と記されています。本学はこれまでもその役割を果たしてきましたが、大学図書館が公共図書館と果たす役割の違いを認識した上で、今後一層、地域に開かれた図書館としての役割を果たしていくことが重要と考えます。また、大学が生涯学習の場や学術文化の地域拠点として機能していくためには、図書館ばかりでなくミュージアムの役割も重要です。

情報メディアセンターでは、図書館、情報処理センター、ミュージアムが一体となって、本学の教育・研究・社会貢献の知的情報基盤として機能するように努めて行く所存です。今後ともご理解とご協力を、よろしくお願い申し上げます。

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